「東大に行くことが勉強のゴール」
という“思い込み”を払拭する

「組織は血のめぐりが一番」と教員たちにつねづね言ってきた私は、2008年に理事長の職を離れ会長になりました。後を引き継ぎ現在まで理事長として西大和学園を率いているのは、私の長男の田野瀬太樹です。

 現在、太樹理事長と日々熱い議論を交わしながら「次代を担うリーダー」の育成に奔走しているのが、2022年から新たに中学・高校の校長となった飯田光政先生です。

 開学当初から私と共に中学・高校の礎を築いてくれた先生方は、同じ西大和学園グループの大学や短大で、その立ち上げや運営に力を注いでいます。彼らを第一世代とするなら、飯田先生率いる現在の教員たちは教員第二世代ということになるでしょうか。

 第二世代の平均年齢は30代後半。名門進学校に比べると、かなり若いかもしれませんが、思春期の生徒たちと時にぶつかり合いながら、全力で導いていくには、エネルギーに満ちた若い力がやはり必要です。

 飯田校長の呼びかけで週に一度行われている学年部長のミーティングで、最近新たに決まった目標のひとつが「中等部・高等部合わせて毎年100人、コンスタントに東大合格者を出そう」というものです。

「30年後の西大和学園はどこを目指すべきか。これだけ優秀な子たちが集まり、『東大に行きたい』と自分たちから声をあげてくれているのだから、絶対に入れてあげよう。トップダウンではなく現場の教員から、そういう声が上がってきたんです」

 ただ、飯田先生以下、若き先生たちがこの目標を設定した真の理由は他にあります。

「西大和学園は、東大をゴールとしない“次の段階の教育”を目指しています。『東大100人合格』は、その段階にシフトチェンジするための目安の数字なのです」

 有志の教員たちがプロジェクトチームを結成し、2022年の秋に始動した「海外大進学プロジェクト」は、シフトチェンジに向けての第一の布石です。