不動産・定期預金・有価証券類は
従来型争族に持ち越される

 老親名義の不動産については、親を囲い込む間に信託契約を偽装し、名義変更を画策する子どももいますが、さすがにそれはごく一部にすぎません。登記簿に記録が残り、後々ほかの相続人にバレるリスクがあるからです。そのため、現代版「争族」においては、親が生きているうちは普通預金の奪い合いがほとんどです。不動産については、多くの場合、親の死後に従来型「争族」が再度勃発することになります。

 親が遺言を残していない場合、遺産は基本的に法定相続通り均等分けとなります。終末療養期間に献身的に親を支えた子どもは、それに要したコスト(寄与分)を請求してくるかもしれません。しかしこれには証拠が必要で、さらに兄弟姉妹すべてが合意する必要があるため、実現は非常に困難です。親としては、介護を頼む際に、適切な金額を前もって渡すべきだというのが私の持論です。

 また、兄弟姉妹の中には、「姉貴は(学費、習い事費、留学費、生活費、結婚子育て費、住宅取得費など)これまでたくさんお金を出してもらっているから、その分は差し引かないと不公平だ」といった主張をする人が少なからずいるものです。これを「贈与の持ち戻し」といい、争いが起こる主題として急増しています。相続税対策として贈与税非課税特例を使う親は多いですが、贈与を受けた子ども側のことを思えば、遺言で「持ち戻しは免除する」と明記しておく必要があります。しかし、そこまで対策を講じている人を私は見たことがありません。