無風のときより長くなる
「最も正解ではなさそう」と感じる選択肢が正解でした。
シンプルで古典的な問題ですが、正解に辿り着ける人はごくわずか。
批判的な思考で考えてみましょう。
直感を裏切る正解
あらためて確認しましょう。
答えは……
無風のときよりも、風が吹いているときの方が飛行機の往復時間は長くなります。
直感に反する解答なので驚いた方も多いでしょう。
ふつうに考えたら「無風」のときと「風が吹いている」ときとで、所要時間は変わらないはずです。
AからBに向かって風が吹いているとき、飛行機は「行き」では追い風で早く到着し、「帰り」では向かい風により遅くなる――。
「行き」で早く着くから、「帰り」で遅れた分は相殺されるはずなのに。
いったい、何が起こっているのでしょう?
逆風の脅威
ポイントとなるのは「逆風」です。
結論から言うと、「行きは早く着いて、帰りはその分だけ遅くなる」という直感が落とし穴です。
簡単な例で考えてみましょう。
無風のときの飛行機の速度:時速200km
であるとします。
このとき、飛行機の往復時間は、
となり、合計6時間です。
とくに難しい計算ではありませんね。
では、「AからBに向かって風速(時速)100kmの風が吹いている」場合の往復時間を求めてみましょう。
行きは追い風なので、
(実際は風速がそのまま速さに加算されるわけではありませんが、計算しやすいように単純化しています)
そして帰りは向かい風なので、
つまり飛行機の往復時間は
となり、合計8時間。
なんということでしょう。
風が吹いているときの方が、往復時間は2時間も長くなっています。
無限の逆風
なぜこのようなことが起こるのか?
それは、追い風による加速と、向かい風による減速は性質が異なるからです。
極端な例で考えてみましょう。
風速が「飛行機の速度」とまったく同じである場合を想定してください。
無風のときの飛行機の速度:時速200km
AからBに向かって吹く風の速度:風速(時速)200km
この場合、前に進もうとする飛行機本来の時速と、それを押し戻そうとする風速が釣り合っています。つまり理論上……
BからAに帰ろうとする飛行機は1ミリも前に進めません。
飛行機は永久にBからAに戻れないので「A,B間の往復時間」は無限になってしまうのです。
だから、風はない方がいいのです。
「思考」のまとめ
「抵抗がある方が、結果的には遅くなる」。
これは同じような条件下であれば、どんな状況でも成り立ちます。
「ふつうに歩いて100メートル往復 VS 動く歩道上での100メートル往復」「ふつうのプールで10メートル往復 VS 流れるプールで10メートル往復」。
いずれも後者の方が往復時間は長くなります。
計算すればわかることですが、「行きで速くなったのと同じ分、帰りは遅くなるはず」と、都合よくつじつまを合わせようとして考えてしまいがちなのです。
・「なんとなく、こうかな?」というときほど、しっかり検証してみる
・極端な場合を考えると「例外」に気づける
(本稿は、『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から一部抜粋した内容です。)
都内上場企業のWebマーケター。論理的思考問題を紹介する国内有数のブログ「明日は未来だ!」運営者
ブログの最高月間PVは70万超。解説のわかりやすさに定評があり、多くの企業、教育機関、テレビ局などから「ブログの内容を使わせてほしい」と連絡を受ける。29歳までフリーター生活をしていたが、同ブログがきっかけとなり広告代理店に入社。論理的思考問題で培った思考力を駆使してWebマーケティングを展開し、1日のWeb広告収入として当時は前例のなかった粗利1500万円を達成するなど活躍。3年間で個人利益1億円を上げた後、フリーランスとなり、企業のデジタル集客、市場分析、ターゲット設定、広告の制作や運用、セミナー主催など、マーケティング全般を支援する。2023年に現在の会社に入社。Webマーケティングに加えて新規事業開発にも携わりながら、成果を出している。本書が初の著書となる。