ちなみに、この依頼を受けた研修講師の知人は、「バカにするな」と怒り心頭に発し、研修そのものを断ってしまった。金輪際、その会社と仕事はしないという。彼の評価は「3.著しく不当」だったわけだ。

 では、「1. 正当」と考え得る可能性がないかと言えば、なくはないだろう。

 時間給として、研修で拘束する時間分を支払うべきという考え方である。したがって、30分少なくなったのだから、その比率について減額されるべきという考え方は合理的だと主張できなくもない。

 企業の研修担当者が部門の予算に責任を負っている場合、効率的なコスト管理の観点から、研修時間の減少に合わせて支払いを調整することは正当な要求とも考えられる。

 しかしながら、研修や講演や講義を実施したことのある人であれば、正当と思う人はまずいないのではないか。

 研修の料金設定は単純に当日の拘束時間に比例するということはありえない。依頼されれば、それがどんな内容であれ、資料の準備や事前のリサーチに相応の時間がかかるし、依頼に対してカスタマイズした内容を提供するためには多大な努力が必要だ。研修時間が2時間なのか、1時間半なのかは、最終工程において少し拘束時間が変わるという程度の違いにすぎない。

 よって、減額については、4分の1ではなく、あくまで少額であるべきだ。こういう考え方もあり得るだろう。この答えは「2. 不当」に該当する。

外注先の負荷を考慮しない企業から
一流の取引先は去っていく

「3. 著しく不当」と考える人の論拠は、以下のようなものだ。

 2時間のプログラムということで、すでに内容や構成を考え、アウトラインくらいまではすでに作ってある。

 2時間の研修と1時間半の研修はまったく別物だ。最初から構成を考え直し、扱う内容の取捨選択をやり直さなくてはならない。初めの構想段階こそ、研修の肝である。

 一から構成し直すわけだから、作業工程を考えると大幅なコスト増になる。したがって一般的なビジネス慣習や公正な労働に関する原則から考えると、「著しく不当」であり、むしろ増額を要求したいくらいだ――。

 もちろん、どこまで構想を進めていたかの程度にもよるが、講師をする立場の人の多くは「3. 著しく不当」と考えるだろう(実際に増額を要求するかどうかは別であるが)。

 その結果、どうなるか。