一流講師ならば、講師側の負荷を全く考慮することもなく、講師へのリスペクトもなく、講師の業務を単純作業同様にしか考えていないような企業との取引から、間違いなく手を引く(ちなみに、「金輪際、その会社と仕事はしない」と言い放った知人はその分野では世に知られた、紛れもない一流講師である)。そして、仕事にありつけさえすればよいと考える二流、三流の講師と入れ替わっていくのだ。

 担当者やその上司が、こうした講師側の事情を理解しており、それでもコストダウンを進めなければならないというケースもあるかもしない。しかしながら、こうした減額を要求してくる企業のほとんどは、講師の業務負荷を理解しておらず、そもそもなぜ4分の3ではだめなのか、なぜ減額したことで講師が怒っているか分かっていないのだ。

 なぜそうなるかといえば、自分で研修講師をやったことも、講師の作業工程をシミュレーションしてみたこともなく、ただただ、研修の枠を作って外注先に割り振るだけであるにもかかわらず、それをもって仕事をしたと考えている――このような人が大量に発生しているからだろう。現場社員の実務能力の低下は甚だしいものがある。

購買部門がネックになることも
企業によって雲泥の差

 さらに困ったことがある。

 研修の担当者は講師の事情をよく理解し、時間が30分短くなろうと同額を支払うつもりで手続きを進めていても、企業の購買セクションが、“拘束時間が4分の3なら価格も4分の3でなければならない”などとバカげた指令を出すことがあるのだ。

 商品特性もまったく考慮せず、紙や鉛筆を買うかのごとく、従量的な尺度を持ち出してコストダウンしようとする。

 不正を起こさせないため、まとめ買いすることで安く買うため、などの目的で作られた購買セクションではあるものの、現場を知らず、何を買っているかもよく理解しないままに権力を振りかざすと、優れた外注先や協力業者はどんどん去っていく。

 購買セクションの無知、無理解にどれだけ現場の担当者が悩まされ、無駄な時間を浪費していることか。ただし、これに関しては、会社によってかなり差がある。良い購買セクションを持つ会社と、どうしようもない会社の差はかなり大きい。