また、通知税理士は「通知をした地域」でしか税理士業務を行うことができないという点も特徴的です。例えば全国で税理士業務を行いたい、と考えた場合には、全国すべての地域の国税局長宛てに、通知を行う必要があります。各地の国税局への通知手続きそのものは、それほど時間のかかるものではありませんが、全国の国税局長宛てに通知を行うとなると、それなりに手間がかかります。私は全国の国税局宛に通知を出しているため、国内のどこでも税理士業務を行うことができますが、同様に全国の国税局長宛に通知を行っていると言う弁護士はそれほど多くないと思われます。

 これら2つの方法は、いずれにおいても税法の試験を受ける必要はありません。しかし、「試験を受ける必要がない」ということは、税務に関する実務の知識はない、ということになります。したがって、もしも弁護士が税務の専門知識を得ようと考えた場合、自ら膨大な時間を割いて勉強をする必要があります。しかし、実際にそのような勉強をして税務に関する実務の知識を得ている、という弁護士はほとんど聞いたことがありません。

企業の身内じゃない
「弁護士」だからこその説得力

 つまり、税理士業務ができる資格を持った弁護士であっても、税務申告や申告書の作成を行うことはできない、と考える必要があります。ということは、税務調査の結果次第で「修正申告が必要になった」ような場合であっても、弁護士だけですべての手続きを済ませることはできないということになります。

 こうした事情を踏まえた上で、それでもなお弁護士に税務調査に立ち会ってもらうことのメリットにはどんなことがあるのでしょうか。

 その1つは見方によってはデメリットでもある、「弁護士が納税者の申告に直接携わっていない」、という点です。

 自ら会計・税務処理を行っていない、ということのメリット。それは実際に起きた事情について、どういう方法がよいのかを「客観的に」判断することができるという点です。自ら監督、指導した税務申告の調査に立ち会い、税務調査官とやり取りするということは、言わば「自己弁護」という形になります。そうなれば、自然と冷静さや客観性を欠き、ロジカルなやり取りができなくなるというケースも増えてくることでしょう。