落合 漢字を知らなくても不自由しませんしね。

暦本 それに、IQテストで出される問題って、いかにもAIで正解できそうなものばかりでしょ?たとえば、同じ大きさの立方体の積み木を重ねた絵を見せて、何個あるか推測させるとか。漢字を知らなくても機械がひらがなから変換してくれるのと同じで、ああいうIQテストがわからなくても、これからはAIが助けてくれるようになるので、知能が高いか低いかはあまり問題ではなくなるのかもしれない。

 ただしその一方で、人間には、IQテストでは測れないものもたくさんありますよね。それこそ落合君みたいに途轍もないことを考える能力や芸術的なセンス、あるいは食べ物を美味しいと感じられるかどうかとか。だからAIの時代になると、IQテスト自体が人間の知的能力を測る尺度になりにくいのではないかと思いますね。

落合 IQテスト、オワコン(笑)。ほかにも、大学入学共通テストとか、専門の士業を決めるテストとか、いろいろとオワコンになりますよ。

暦本 たしかに、いかにもAIでクリアできちゃいそうなやつばかりだよね。それで人間の能力を測る意味がなくなったときに、どんな尺度で本当の人間の価値を測るべきなのか。それを探りたいとは思いますね。

落合 『26世紀青年』という映画にもIQテストのシーンがあったじゃないですか。500年も冷凍保存されていた平凡ド真ん中の男が26世紀に蘇って、簡単なテストで高得点を取っただけで平均値を逸脱しているので、「天才」と呼ばれる。

AI化が進んでいくと
知的能力が局在化する?

暦本 そうそう。で、農作物にスポーツドリンクを与えたせいでダメになっていた畑に水をやることで、国家的な農業問題を解決する(笑)。あの映画は2006年の作品で、まだ生成AIにリアリティがなかった時代なので、500年前の人間の知能が世界を救うという設定だったんですよね。