海外移住、タワマン節税…
国とのいたちごっこが続いている
もうひとつ言っておくと、もし本当に相続税対策をしたいとしたら、まともな節税アドバイザーは誰もタンス預金を推奨しません。もっといい方法があるのです。
歴史的にはプライベートバンカーなどの富裕層専門の金融サービスの担い手が、タンス預金よりもずっと効率のいいさまざまな手法を編み出しては富裕層にアドバイスしてきました。
もう使えない手口を中心に紹介すると、シンガポールに移住して5年がんばるというのがありました。非居住者になって一定期間がたつと日本の税法が通用しなくなるというので、シンガポールで子孫に財産を贈与するわけです。
当然、国もこういう方法を潰そうとします。
シンガポールで「もう少しで5年だ」と思っていた人に突然「ルールが10年に変わりました」と言ってみたり、出国税という仕組みを作って節税のために外国に行こうとすると、その前の段階で税金がかかるようにしたりと、対策を打ち出してきたのです。
ちょっと前までブームだったのがタワマン節税です。タワマンは上の階の方が下の階よりも市場価格が高いにもかかわらず相続税の評価は上でも下でも変わらなかったため、上層階に住んで相続税を節税するというのがタワマン節税のポイントでした。
これも国がルールを変えることにしたため、タワマン節税が成立しなくなるだけでなく、タワマンの価値自体が変わってしまうかもしれません。
今でも通用するルールかもしれないと都市伝説で言われているのが「資産をビットコインに替えてドバイに移住する」というものです。
詳しい方はご存じだと思いますが、ビットコインは金融商品ではないので「億り人」になってしまうと分離課税が適用されずに、半分が税金で持っていかれてしまいます。ところが金融商品ではないことを逆手にとれば、富裕層がビットコインを持って国外に出ても出国税が適用されません。
その状態でドバイに行けば贈与税がかからないので簡単に子どもに財産を生前贈与できるというのです。まあこの都市伝説が事実だったとしたら有利な話すぎるので、これもいずれ国に潰されてしまうでしょう。
いずれにせよ相続税対策というものはその道のプロがいます。自分でこっそりタンス預金をしてごまかすぐらいなら、いわゆるプライベートバンカーのような人に頼ってプロの節税策をアドバイスしてもらうほうがよほど合理的だということです。