妻か夫のキャリアが犠牲に
共育て夫婦の究極の2択

 就業構造基本調査によると、夫が雇用されている場合、妻が正規の職員・従業員の割合は、最大でも30~34歳の約4割にとどまる。ミレニアル世代においても妻が正規の職員・従業員の夫婦は多くない。日本では就業継続するだけでも大変な状況であるため、子育てしながら夫婦とも正規雇用で働いている人たちに対しては、「勝ち組」という言葉が浮かびそうだ。

 だが、本当にそうだろうか。夫婦とも正規雇用で働く人たちを対象にした財団ミレニアル世代夫婦調査には、多くの悩みが寄せられた。以下、Webアンケートの自由記述から抜粋する。

「夫婦2人とも仕事で活躍したいが、現在の働き方、職場の環境、実家との物理的距離を考えると、正直満足に育児ができないと思う。子どもの教育等を考えると、どちらかが仕事をセーブしないと厳しいと感じる。そうなると年収の低い自分がセーブするしかない。子どもが生まれる前よりは、仕事をして稼いでキャリアアップしたいという意欲も落ちている」(女性・製造業・末子0歳・総合職)

 正規雇用で就業継続できている場合も、自ら仕事への意欲を押し込め、十分な能力を発揮できない(あえて発揮しない)という状況がある。産休・育休を経て復職する女性のために両立支援体制を整えたり、施策を講じているのに、結局辞めてしまったり、家庭ばかりを優先させて仕事が疎かになっているように見える女性たちに対して、「キャリア意識が低い」と頭を抱えている企業も多いかもしれないが、本人たちは必ずしも望んでそうしているのではない。

「(夫婦)2人ともが活躍すると、子どもと触れ合う機会が減る。かといって、子どもと触れ合う時間、育児等を増やすと、仕事に影響が出る。仕事か子ども、どっちかを絶対に選ばないといけないのではないかと思っている」(男性・製造業・末子1歳)

「子どもを作る以上、何かを犠牲にする必要がある。社会の側が未だ育児に理解がなく不利益な扱いを受けることも多い中、双方のキャリアを上げることはまず無理。どちらかが諦める必要があり、経済的に利益が得られる選択を、望まずともせざるを得ない」(男性・公務・末子0歳)

「子どもを作る以上、何かを犠牲にする必要がある」……夫婦ともに働いている人たちにとって、幸せとはいったいどういうことなのだろうかと考えさせられるコメントである。夫婦がそれぞれ「仕事か家庭」のいずれかを選択しなければならず、「妻か夫のキャリア」のいずれかを犠牲にしなければならない、という中で本当に“幸せ”な生活が得られるものなのだろうか。