キャリアと子ども、どちらか一方は諦めなければいけない。妻か夫、どちらかが犠牲にならなければ、生活が成り立たない──。共働きカップルが直面する現状は、社会の欠陥に他ならないだろう。

 本来なら、誰でも自分の望む幸福な生活──仕事においても、家庭においても──が叶えられるべきではないか。そしてそれを叶えられた人が「勝ち組」になるのではなく、「普通のこと」になる社会を目指すべきだ。

日本の育児休業制度は
世界でもっとも充実している!?

 2021年にユニセフ(国際連合児童基金)が発表した各国の保育政策や育児休業政策を評価し順位付けした「先進国の子育て支援の現状」(OECD、EU加盟国対象)において、日本の育児休業制度は41カ国中1位だった。制度上、日本は父親の育児休業が世界で最も長く、父親と母親に認められた期間がほぼ同じ長さである唯一の国だ。

 しかし、世界一の制度を持つ国でありながら、日本の男性の取得率は17.13%(3*)と、近年伸長しているとはいえ、まだまだ低い。各国、制度や算出方法が異なるものの、ドイツでは2019年の父親の育休手当受給率は43.5%と過去最高を記録(4*)した。アイスランドの男性の育児休業取得率は74%という統計(5*)もある。アイスランドは、世界ジェンダーギャップ指数が14年連続1位(6*)である。一方、日本は146カ国中125位で、先進国の中では最低レベル、アジア諸国の中では中国や韓国、ASEAN諸国より低い結果だった。

 ここまで述べてきた通り、女性の両立支援制度は、以前に比べるとかなり整えられてきた。しかし、現状ではかろうじて就業を継続できるものの、家事育児負担が大きく、思うように活躍できない女性たちもいる。そのため、女性への家事・育児負担の偏りを減らし、社会での活躍を推進させる一助として、男性にもこの世界一の育児休業制度を活用させようと、様々な手立てが打たれている。

 企業によっては、男性育児休業取得率の目標を100%と設定し、まずは短期間からの取得を推奨、そこから徐々に期間を長くさせようと試みたり、一定期間有給化することで育児休業取得による収入減への不安に対応したりしている。

(3*)…令和4年度厚生労働省「雇用均等基本調査」
(4*)…2022年JILPT国別労働トピック「ドイツの父親の育休手当=両親手当(2022年8月)」
(5*)…2020年1月内閣府『共同参画』「各国の男女共同参画の取組─各国大使館より─」
(6*)…2023年世界経済フォーラム「Global Gender Gap Report 2023」