炎症反応が脳内に起きると、神経細胞に悪影響がもたらされます。すると、たとえば神経伝達物質の1つ、セロトニンの分泌が阻害されたりする。セロトニンとは別名「幸せホルモン」とも呼ばれ、その分泌により気分が安定して幸福感が高まります。逆にいえば、セロトニンの分泌が減少すると、うつ病になるリスクが増えます。いわば、うつ病も老化現象の一種であり、酸化ストレスがその原因の1つであるともいえるのです。

他者と交わらずに育った
孤独なマウスは早死にする

 ソーシャルストレスは、人と人との関わりから生じるストレスです。

「ならば、そもそも人と関わらなければ、ソーシャルストレスを受けなくて済むのでは?」

「いつも単独で過ごしていれば、ストレスによる老化を避けられるのでは?」

 そのように考えるのももっともですが、実際は違います。

 単独で過ごす。すなわち孤独も、脳内ストレスの一要因となります。

 人によって程度は異なりますが、孤独のもたらす悪影響は、マウスレベルの実験で明らかにされています。

 仲間のマウスと一緒に飼育されている場合と、生まれたときから1匹で飼育されたマウスでは、明らかに寿命が異なります。孤独なマウスは、短命なのです。その理由は、脳の神経機能の低下です。脳の神経細胞は、他者との交わりによって活性化されます。その交わりが失われると、活性化しなくなる。すなわち機能自体が低下し、全身のホルモン制御機能にも悪影響が生じてくる。ひいては免疫機能も弱り、感染症にも罹りやすくなる。そして長く生きることなく、死に至るのです。

 孤独がもたらすストレスについては、アメリカのハーバード大学にある「健康と幸せセンター(Lee Kum Sheung Center for Health and Happiness)」での研究が知られています。同センターでは、人とのつながりが幸福や健康に与える影響や、男性が孤独死しやすい原因を調べています。その結果、孤独感は個人のウェルビーイングを低下させ、健康上のリスクを高める可能性もあると指摘されています。