一方、大人は長く生きている分だけ多くの語彙を持ち、知らず知らずのうちに豊かな人生経験を積んでいます。いわば、数学の勉強に欠かせないイメージ力を自然と育んでいるのです。

 大人が数学を学び直す際の利点はこれだけではありません。大人のさらなるアドバンテージは、何よりも「一度やった」ということです。当時どんなに数学が苦手だったとしても、文字を使って計算をする方法やマイナスの数のことについての記憶はいくらかは残っている人がほとんどではないでしょうか?また全体のボリュームに対するイメージもある程度は持っていると思います。これが強みなのです。初めて数学を学ぶ中学生にとっては文科省の定めるカリキュラム通りに学ばざるを得ない部分もあるかと思いますが、一度やったことのある我々は全体を大胆に再編成することができます。

 大人が中学数学を復習する際の柱も、まさにこの「イメージ」と「再編成」です。

7つのテクニックの役割

 本書では中学数学の全単元をイメージを加えつつ再編成し、論理的に考える技術の習得に繋げていくために次の「7つのテクニック」を用意しました。

【7つのテクニック】
 (1)概念で理解する
 (2)本質を見抜く
 (3)合理的に解を導く
 (4)因果関係をおさえる
 (5)情報を増やす
 (6)他人を納得させる
 (7)部分から全体を捉える

 中学数学の中にはこれだけ論理的思考のヒントが隠されています。
 たとえば、中学2年生で習う「三角形の合同条件」なんて日常生活で使う場面はまるっきりありません(よね?)。数学の問題を解くことにしか使えないようなら、まさに典型的な「むだなこと」でしょう。でもこれが「効率のよい情報の集め方」の一例だとしたら……?そしてそれによって「見えない性質をあぶり出す」ことができるのならどうでしょう?ちょっと「使えそう」ですよね。

 また、こうして再編成してみると、今まではバラバラで繋がっていなかった各単元の関係性が明らかになり、中学数学全体が1本の大樹のように感じられると思います。大きな体系をつかむことでそれぞれの単元への理解が深まり、学習のスピードも格段に上がります。

1つずつそのポイントを紹介していきましょう。