「数学は苦手だけれど、何とかできるようになりたい」人のための『大人のための数学勉強法』が発売された。きたみりゅうじ氏のイラストとともに、数学の知識や学習のコツをわかりやすく紹介する画期的な内容は、発売すぐに大きな反響を呼んでいる。今回はその著者・永野裕之氏に、勉強法の重要なポイントであるノートの使い方を解説してもらう。

ノートは未来の自分のために書く

 ノートを取るのは何のためでしょうか?もちろんそれは、「私は話を聞いてますよ」というポーズのためではありません。人間の記憶というのはかなり曖昧なものですから、今、わかっていること、頭に入っていることでも、しばらくすれば忘れてしまうのが常です。だからこそノートを取ってしっかりと残しておく必要があります。

 しかし、特に学生の場合ですが、ノートは一応取るものの、後でそれを見返すということを念頭に置いていないような書き方をする生徒さんが少なくありません。実際そういう生徒さんは後でノートを見返すということをしません。つまり、授業内容のほとんどは記憶の海の藻屑となって消えてしまいます。そうなると、試験前になって慌てて教科書と問題集を開いてみても、ほとんど独学で勉強するようなものですから、成果が上がりづらいのは当たり前のことです。

 こういう生徒さんの場合にはまず、ノートは先生の満足のためではなく、未来の自分のために書くものだ、ということを教えます。未来の自分のためと思えば、それまで走り書きのように乱雑に書いていたノートも、わかりやすく、丁寧に書こうという気持ちになるものです。

取るノートから自分で作る「宝物」ノートへ

 ……と、ここまではノートの備忘録としての役割です。記憶のメモとしてのノートは見聞きしたことを「書き取る」ことが主たる目的になりますが、じつはノートを書くことには、備忘録よりもはるかに重要な役割があります。