逆に、自分の意志で買った場合だと、「自分の判断は間違っていなかったと思いたい」という心理が働き、「買って良かった」という点を探そうとするので、満足してもらいやすくなります

「売る」ではなく、「売れる」。

 その違いを意識するだけで、お客様の満足度も変わってきます。お客様の満足度が高まれば、その先の「リピート購入」や「紹介」にもつながります。言葉としては些細(ささい)な違いですが、大きな違いであることを理解してくださいね。

売れる技術(3): 「売る」ではなく、「売れる」を意識する

「売れる」はお客様との対話でつくる

「売れる」を考えるとき、とても大切なスタンスがあります。それは「お客様を想う」ということ。

「売る」は一人でできるかもしれません。相手の気持ちなど気にすることなく、一方的にこちらの言いたいことを言い、相手を説得して売っていくのであれば、お客様を想わなくてもいいかもしれません。

 しかし、「相手に納得して買ってもらう」「欲しい気持ちを引き出して買ってもらう」には、相手とのコミュニケーションが必要です。イメージからすると、あなたが青で相手が黄だとしたら、「売る」は相手も青に染めること。「売れる」は青と黄を混ぜて緑をつくることです。

 仏教には「対機説法」という言葉があります。「相手の能力や状況に応じて教えを説くこと」を意味します。

 お釈迦(しゃか)様は、お弟子さんに説法をするとき、相手に合わせた話をされたそうです。だから、お釈迦様の教えをまとめた経典(お経)の中には、相反することが説かれていることがあります。「一緒に学べる友達がいることは、悟ることのすべてだ」と「書かれた経典もあれば、「一人で孤独に進んでいくことが大切だ」と書かれているものもあるのです。

 そこだけを聞くと、お釈迦様は矛盾したことを言われているように思えます。しかし、そうではないのです。お釈迦様の説法は薬にたとえられます。それは、相手の症状をよく見極め、それに合う薬を処方したからでしょう。

 たとえば、病気のときに、同じ症状でも体を温めたほうがいい人もいれば、冷ましたほうがいい人もいます。必要なものは相手によって違うのです。