そこで新たな出会いがあり、新たな意見や情報が入ることもあります。仮にその場では時間がなく、深く話せなければ、改めて別の機会を設定するとよいでしょう。「相談の頭出し」をしておくことで、次の相談がしやすくなります。

 チャンスがあればいつでも相談するぞという状態にしておく。相談する機会は意外と身近に転がっているのです。

「種まき相談」の役に立つ
ビジネススキームの「ポンチ絵」

 工業製品の開発では、正式な設計図の手前で描く下書きを「ポンチ絵」と呼びます。私も、構想やアイデアを事業に昇華させるときに、必ずビジネススキームの「ポンチ絵」を描くようにしています。

 見立て、仮説、計画の3段階で精度は違いますが、どの段階でも描いておくと、プロジェクトの全体像や、その中であなたが担っている部分が一目瞭然になります。自分が何をやりたいのかも伝えやすい。ポンチ絵を描く過程で、自分自身の頭の中も整理されます。

 ポンチ絵を描けるようになるには、大まかな事業の流れや顧客の課題が手元に揃っていなければなりません。ビジネスになるのか、マネタイズのポイントはあるのか、どういうデメリットやリスクがあるのかを、私はこのポンチ絵で見ることを習慣にしています。

「種まき相談」で偶然を活かすにあたって、このポンチ絵が効いてきます。その場でたまたま出会っただけの人に説明するときでも、たった1枚の資料で事業の目的や意義、事業の流れや顧客の課題などが、一目瞭然で説明できるからです。

 どこを目指しているのか。どこに顧客の課題があって、その課題に対してどのようなアクションをすればいいのか。ポンチ絵があることで、相談相手は全体像を踏まえたうえでの意見や情報を伝えやすくなるのです。

 また、言葉で長々と説明すると、全体像の把握に時間がかかるため、曖昧なまま相談が進むことがあります。その点、ポンチ絵にして視覚的に示しながら説明すると、お互いの認識のズレが小さくなり、実りの多い相談になりやすいというメリットもあります。偶然の出会いを、最大限活かすことが可能になるのです。