富士山の麓にて、軟水と静岡酵母で醸す山廃酛の酒
酒造りを始めたきっかけが、杜氏との偶然の出会いという、1830年創業の富士高砂酒造。近江商人の山中正吉が東海道を旅したさい、吉原の宿で同宿の病人を看病。その人が能登杜氏で、助けてくれた正吉に酒蔵創業を勧めたという。水が良い土地を探して、富士山本宮浅間大社の近くに蔵を構えた。仕込み水は富士山に100年前に降ったとされる雨水の伏流水で、敷地内の井戸から潤沢に湧く。
この蔵で定評があるのが山廃造りだ。1909年に醸造技師の嘉儀金一郎が考案した天然の乳酸菌発酵による自然な造りで、当時の能登杜氏が技術を導入。一般的に酸度が強く、太い味になりやすいといわれるが、富士山の軟水と県が開発した低酸生成の静岡酵母を使って口当たりよく仕上げ、生産量の半分以上を占める。