というのも、何か新しい発想が世の中に生まれるときというのは、極めて常識的な発想(秩序=コスモス)と、極端で非常識的な発想(混沌=カオス)とを、行ったり来たり往復した結果、その間にあるどこかで生まれることも多いのです。

 メーカーの商品企画会議などで、同じ顔ぶれの社員がいつもの発想で意見を出し合っても、結局はどこかで見かけたような既視感の強い商品しか生まれません。

 そこで、現実的に考えれば実現性が低い突拍子もないアイデア(カオス)をあえて会議に投入してみると、それを揺り戻す形で新しい発想も生まれてきます。その振れ幅が激しいほど、その振幅のどこかに、光り輝くアイデアが見つかるのです。

 実際、整いすぎている案というのは、予定調和で面白みが少ないものです。私もテレビ番組の企画会議などに呼んでいただいたときなどに、それを肌で感じることがあります。

 コンプライアンス重視の風潮が強まる中、どうしても「コスモス」に寄りすぎた無難なプランに落ち着いてしまうことがよくあるのです。そういうときは、いったん全部をぶち壊し、更地からもう1回やり直すというのも1つの方法です。

 ビートたけしさんと共演させていただいたときのエピソードです。

 収録中に出演者のトークが淡々と進んで空気が穏やかになってくると、たけしさんは必ずといっていいほど「カオス」な言葉を放り込み、その場を一瞬で混沌とさせます。MCの方が慌ててそれを揺り戻し、ちょうどいい空気に整うということがよくあったのです。

 このカオスとコスモス、混沌と秩序の間というのは、若い10代や20代には少し難しい感覚かもしれません。50歳くらいまでには思考の癖として身につけておきたい習慣の1つです。

「好き」や「得意」を決めつけない
好奇心が人生を豊かにする

 誰でも得意分野を1つは持っているものですが、その「得意」や「好き」といった範囲を決めつけてしまうと、可能性を広げることの妨げになってしまいます。

 そもそも上手でなければいけないというわけでもなく、楽しければやり続ければいいわけです。

 そして、自分が何を好きなのか、何が向いているのかを発見できる時期というのが、50歳や60歳といったそれなりに年齢を重ねた時期であることも多いのです。

 中間管理職になって心の余裕ができた40~50代の時期、あるいは定年退職で趣味に時間を費やせる60代というのは、可能性を広げる機会としてはいいタイミングです。