フランツ・カフカは、人間を取り巻く不条理を追究する哲学「実存主義」の文学作品を多く残しました。彼が書いた『変身』『城』などを読むと、「不条理というのはこういうことか」と皮膚感覚で理解できます。「人の存在と不条理とは何でしょうか」と聞かれたら、私などは「カフカやカミュを読みなさい」と勧めています。

 哲学を通して概念を肌身で知っておき、ものの見方として身につけておくと、これがその後の人生における知性の武器になります。誰かに相談をされたときに、上っ面の表面的なアイデアではなく、哲学に裏付けされた立体的な助言ができるようになるはずです。概念の1つひとつが私たちの心を豊かにし、人生の厚みを増してくれるのです。

 ドラッカーはマネジメントに関する概念をいくつも提唱しました。よく耳にする「顧客」という言葉も、「企業の目的は顧客を創造することである」という彼の唱えた概念の1つです。「顧客とは誰か」「自分にとっての顧客とは」という形で掘り下げていくと、物事の本質が今まで以上に見えてきます。

「すごい!」という感動を持ち続け
感受性を枯れさせない

 感動は脳の若さを保ちます。「楽しい!すごい!」と感じているとき、あるいは新しい何かに挑戦をして心が躍っているとき、脳は血流量を増やし、ドーパミンを放出してその働きを高めます。

 実際、アスリートの素晴らしいプレーや、美しい4K映像などを観て感動しているとき、心の底から若返っているような心地よい気分になるものです。深い感動と新鮮な喜びが心のアンチエイジングにつながります。

 この「スゴイ!」という心の躍動を、意識して自分で起こしてみるという方法があります。あえて能動的に「これはスゴイことなんだ」と自らに思い込ませ、脳を喜ばせてあげるのです。雨上がりに散歩をしていて、草の影に小さな蛙を見つけたら、「こんなとこに蛙がいる!」「なんて逞しい!」「なんてかわいらしい!」と意図的に感動を自己演出してみるのです。