ニーチェの『ツァラトゥストラはかく語りき』には「超人」という彼が提唱した概念がたびたび出てきます。これをニーチェが考えた人間としての究極の理想像であることを語彙として知っていないと、「キン肉マンみたいな人のこと?」という間の抜けた会話になってしまいます。

 どんな思想や知識を得るにも、分野ごとに求められる語彙があります。語彙を増やしていくことが知を高めるうえで何よりも重要であり、それを助けるのが、誰もが1冊は持っているであろう辞書です。

 もちろんネットでも類語や関連語は調べられますが、信頼性の担保という点ではやや不安なところもあります。辞書は、日本語のプロたちによる厳格な編集工程を経て、高いハードルを越えてつくられていますので、真理の基準点として十分に信用できるツールです。私は、複数の辞書が入っている電子辞書をよく使います。

 リビングに辞書を置いておけば、テレビを見ているお子さんやお孫さんから「これどういう意味?」と聞かれてもすぐに引けます。一緒に調べて習慣化していくうちに、家族みんなの語彙力が高まり、日本語力もアップしていくはずです。

現代人はインプット過多
アウトプット優先に切り替える

 ひとことで「インプットとアウトプット」といっても、現代人が行なっているのは圧倒的にインプットのほうが多いはずです。

 本を一冊読んでも内容を誰かに説明することはそうありませんし、ネットに溢れる膨大な情報をスマホで仕入れたとしても、それをアウトプットする機会も多くはありません。結局のところ、現代人はすべて「インプット過多」なのです。

 過剰なインプットで脳が情報を処理しきれないオーバーフローのような状態になると、脳疲労でストレスが増幅し、心の疲れをも引き起こすといわれています。先日もテレビである脳神経外科医の方が、脳の疲れの原因として「インプット過多」をあげていました。必要なのは、思考習慣を「アウトプット優先」へ切り替えることです。