『女の旅』(大洋図書)で日本各地をひとり彷徨い、世間が考える「女の幸せ」とは異なる女性の生き方を問うてきた作家の花房観音さん。本記事では、『人生は「気分」が10割 最高の一日が一生続く106の習慣』(キム・ダスル著、岡崎暢子訳)の発売を記念して、昨今SNSを中心に蔓延する「怒り」の遠ざけ方について寄稿いただいた(ダイヤモンド社書籍編集局)。

【もうやめて】「いつも何かに怒っている人」から命がけで逃げるべき理由とは?「怒り」から逃げ、旅をしよう(Photo: Adobe Stock)

怒りを遠ざけるのは「生きる努力」

 2年前、51歳のとき、街中で息ができなくなり倒れた。

 救急車で運ばれ集中治療室に入り、しばらく入院していた。病名は「心不全」だったが、様々な検査の結果、一番の原因は「高血圧」だと告げられた。

 40歳になった頃、「血圧が高い」と指摘は受けていた。だが家で血圧を測るのはめんどくさく、はっきりとした自覚症状がないために放置していた。その結果、徐々に身体が蝕まれ、心臓が止まりかけたのだった。

 自分は健康だと思い込んでいたこともあり、初めての入院はかなり衝撃的な出来事だった。

 入院中は、もう長く生きられないんじゃないか、助かりはしたけれど今までと同じようには生活できないだろう、と絶望していた。

 それまでは、ただなんとなく生きていただけだったことを思い知らされた。

 自分ではそれなりに健康に気をつけていたつもりだったけれど、全くそうではなかった。

 退院してからは、二度と入院したくない、何よりまだ死にたくないとの一心で、運動をして食生活を改善し、あらゆる数値を落として薬も減らした。以前のように「ただなんとなく生きている」ことはしていない。

「生きる努力」を心がけている。死にたくないから、まさに命がけだ。

 倒れる前と同じように、ただなんとなく生きているままだったら、今度こそ命が絶えるかもしれないという恐怖が私を突き動かす。おかげで、1年半ほどかけて入院前より健康で元気に暮らしている。

 けれど、ジムと食生活で身体の調子を整えただけではダメなのだ。

 身体と同じぐらい大切なのは心だ。

 何しろ血圧というのは、ものすごく「気分」に左右される。退院後も毎日朝晩血圧を測っているので、それを痛感している。

 特に、怒りや苛立ちや悲しみを感じていると、わかりやすく血圧が上がる。こんなにも気分と肉体は直結しているのかと驚いた。みんな何かに怒ったあとは、ぜひ血圧を測って欲しい。

 入院した際の血圧は上は200近くあったという。現在は薬も飲み、110前後で落ち着いてはいるが、やはり怒りの感情が高まっていると数値が高くなる。

 だから「怒り」の感情を遠ざけることは、私の「生きる努力」のひとつだ。