男も女も関係ない

 怒りを遠ざける努力と共に心がけているのが、楽しむ努力だ。

 ただ生きているだけでは、老いて弱り、負の方向にしかいかない。身体が衰えていくのならば、せめて心だけでも元気でいたい。

 そのために運動しているのもあるし、とにかく常に「好きなもの」を見ているようにしている。

 今、やたらと耳にする「推し活」も、生きる努力のひとつだと思う。恋愛のように傷つきはせず、応援して、幸せな気分になれて、生活に救いと潤いができる。

 私の場合は、今いちばんといっていいぐらい人生を楽しくしてくれているのは、ストリップ劇場に通うことだ。

「女が女の裸を見て何が楽しいの?」なんてたまに聞かれはするけれど、美しく鍛え上げられた女性の肉体と、極上の表現、すばらしいエンターティメントのステージを楽しむのに、男も女も関係ない。ときに涙が出るほど感動もする。

 地方にあるストリップ劇場にひとりで行って、素晴らしいステージを見たあと、その土地の美味しいものを食べることで、どれだけ救われたか。

 怒りを遠ざける。

 美味しいものを食べる。

 好きなものを見つけ、眺める。

 私は退院後、「生きる努力」を意識するようになったおかげで、とりあえず今は人生の中で一番元気に過ごせている。

花房観音(はなぶさ・かんのん)
小説家、バスガイド。1971年、兵庫県豊岡市出身、現在京都在住。京都女子大学中退後、さまざまな職を経て、2010年に第1回団鬼六賞大賞を『花祀り』にて受賞。性愛、ホラー、ミステリー、怪談、時代小説等を著書多数。ミステリー作家・山村美紗の謎の生涯を追った『京都に女王と呼ばれた作家がいた 山村美紗とふたりの男』等、ノンフィクション作品も執筆。2022年に心不全にて緊急搬送された経験をもとに描かれたエッセイ『シニカケ日記』も話題に。