いやはや。これはとんだお戯れである。刻苦勉励を旨とするフランクリン(編集部注/アメリカ初の自己啓発本『フランクリン自伝』の著者、ベンジャミン・フランクリン)流の自助努力系自己啓発本とは大違い。第一、心に抱いた夢がそのまま叶うのであれば、誰も苦労などしないではないか。このジェームズ・アレンとかいう御仁は、何をたわけた、常識はずれなことを宣うておられるのか?

 だが、しかし、実のところ、私はこの本を直ちに放り出してしまう気にもならなかった。否、それどころか、むしろ俄然興味が湧いてきた。

「引き寄せの法則」の源が
アメリカにあると判明

 自助努力系自己啓発本が主張する「努力した者は、報われる」ということは、まあ、言ってみれば当たり前のことである。しかしアレンの『「原因」と「結果」の法則』は、それとはまったく別のことを言っている。「こうなりたいと思えば、そうなれる」と言っているのだ。

 楽でいいではないか。そもそも私は、楽な道が好きなのである。そして常識はずれの突拍子もない考え方が、私は大好きなのだ。

 ということで、アレンのあからさまにマユツバな『「原因」と「結果」の法則』を読んで、激しく興味をそそられた私は、次から次へとこれと同種のヘンテコリンな自己啓発本を読破していった。

 そしてその過程で、アレンの提唱している「人間が心の中で願うことは、すべて実現する」という考え方が、一般に「引き寄せの法則」と呼ばれていることを知ることになる。アレンの言説は決してオリジナルなものではなく、「引き寄せの法則」という言説を基にし、その上に成り立っていたのだ。

 ではそのアレンが拠って立つ「引き寄せの法則」とは何であり、またそれはいつ頃、どのような背景の下に言われ始めたのか? 私の興味は、当然、そこに向かった。そしてあれこれ調べていくうち、「引き寄せの法則」の源が、アレンの故郷たるイギリスではなく、アメリカにあることが判明する。