生きている間は裕福な暮らしはできなかったが、主著である『「原因」と「結果」の法則』だけは彼の死後、自己啓発本の名著として知られるようになり、ジェームズ・アレンの名声はアメリカに、そして遠く日本にまで及ぶことになる。なるほど、自己啓発本をこよなく愛するT山君が、100年以上も前に書かれたこの本を手にしたことには、このような背景があったわけである。

自己啓発本の「名著」の要点は
冒頭の一節に凝縮されていた

 さて、そんな来歴を知った私は、ますますこの本に興味を抱き、早速これを取り寄せてみたのだが──実際に手にしてみて、色々と驚くことがあった。

 まず第一に薄っぺらい!大きめな活字、そして広めの余白を採用しながら、それでも本文は100ページに満たない。読もうと思えば、ものの1時間で読めてしまう。今まで読んできた自助努力系(≒自伝系)自己啓発本のずっしり感とは大違いである。

 また中身を読んでみても、まるで散文詩のよう。なんだかこうサラッとしすぎていてどうもピンと来ない。アレ?この程度?これがT山君の言う「世に数多ある自己啓発本の原点」なのか?

 しかし、気を取り直して2度、3度と繰り返し読んでいるうちに、ようやくこの本の要点がつかめてきた。

 私が思うに、『「原因」と「結果」の法則』の要点は、冒頭の一節に凝縮されている。その一節とは、

《「人は誰も、内側で考えているとおりの人間である」という古来の金言は、私たちの人格のみならず、人生全般にあてはまる言葉です。私たちは、文字どおり、自分が考えているとおりの人生を生きているのです。(『「原因」と「結果」の法則』13頁)》

 というもの。何しろ冒頭の一節なので、最初は何となく読み飛ばしてしまったのだが、この先、この文章は少しずつ形を変えながら何度も繰り返し登場する。たとえばこんな風に──。