許容される範囲の陰謀は
いまだに存在している

 これまでの歴史とその転換にはふたつの大きなポイントがあります。

 ひとつは政治家の命を狙うことの不毛さが周知されたのでしょう。バタフライエフェクトと言い換えてもいいかもしれません。

 政敵を排除することで新たに、より劣化した別の政敵が出現してしまう。そのことで状況がより悪くなってしまうリスクがわかってきたのでしょう。おそらくベトナムでアメリカ政府はこれを学んだのだと思われます。

 もうひとつのポイントは、とはいえ許容される範囲内の陰謀はいまだに存在しているということです。ここは私が実体験から確信を持っているポイントのひとつです。大組織には必ず暗部が存在するものです。

 具体的には数万人の組織があったとして、その組織の枢要な箇所を任された100名前後の幹部がいたとします。その中の一定の人数は派閥をつくって、組織の命令に意図的に背いて、自分たちが考える別の行動をとるようなことが普通に起きています。

 実例をお話しできないのが恐縮ですが、ベストセラー漫画の『島耕作』シリーズで、舞台となる初芝電産の組織の中で派閥抗争が描かれるシーンを想像していただくと、ある程度イメージが伝わるのではないでしょうか。

 陰謀が画策された場合、往々にして用いられる手段は「何かをしないこと」です。ここで冒頭のトランプ暗殺未遂事件の疑問に戻ります。