自動運転AIは目の前の「3人の歩行者」と「1人の歩行者」どちらを犠牲にするべきなのか?写真はイメージです Photo:PIXTA

「自分の頭で考える力」、つまり“思考力”がないと、社会で取り残されてしまう現代。そこで著者がすすめるのが、楽しみながら思考力を鍛える「思考実験」だ。自動運転が実現しつつある今、交通事故に直面した際、答えを出すのはAI──最善の方法を問う2択、あなたならどちらを選ぶ?※本稿は、笠間リョウ氏『頭がいい人の論理的思考が身につく!大人の思考実験』(総合法令出版)の一部を抜粋・編集したものです。

完全な自動運転が可能になったとき
さまざまな倫理的な問題が露呈する

【思考実験1「自動運転車AIの判断」】

 近年は人工知能(AI)の技術が目覚ましい発展を遂げています。AIの技術は自動車の自動運転技術にも応用され、条件つきの自動運転はすでに実現しています。

 一方、将来、完全に自動運転が可能になったとき、さまざまな倫理的問題が出てくる可能性があることがわかりました。

 たとえば、あなたは、自動運転で街中を走っています。ところが、車の目の前に不意に3人の若者のグループが飛び出してきました。左側は壁が迫っており、この速度でぶつかれば、乗っている自分が死んでしまうだけでなく、3人も避けられるかわかりません。ここで右にハンドルを切れば、3人を避けることはできます。しかし運の悪いことに、3人を避けようとして右にハンドルを切ると、別の1人の歩行者をはねてしまうことがわかりました。

 さて、自動運転を担っているAIはどのように判断を下せばよいのでしょうか?

【解説】

 事故を回避する機能をAIにプログラムするときに、どのようなプログラムをすればいいのかという思考実験です。

 より多くの人を幸福にする考えである功利主義の考えをAIに採用するのであれば、3人を助けるために、1人を犠牲にするという判断をAIは下します。

 しかし、その犠牲になる1人が妊娠している女性で、双子の赤ちゃんがお腹にいたとしたら?功利主義では解決できない問題になります。

 また交通事故の責任は誰が取ることになるのでしょう?AIは人間ではありませんが、交通事故の責任を取ることができるのでしょうか?

 このように思考実験を重ねることで、自動運転技術には、解決しなければいけない、さまざまな問題が出てくるということがわかるでしょう。

 このように思考実験で今後問題になりそうなことが前もって予測をすることができるのです。

宇宙を移動する兄と
地球にいる弟の歳は逆転する?

【思考実験2「地球にいる弟と宇宙を移動する兄」】

 地球に双子の兄弟がいます。

 兄は地球から6光年離れたある星に出かけることになりました。

 一方、弟は地球で仕事があって、兄の帰りを待っていなければなりません。兄が乗っているロケットは、どんな加速も減速も可能な高性能のロケットです。