SNS、チャット、メール……現代は、史上だれも経験したことのない「言葉の洪水」に襲われている。あなたも毎日、ペーパーワークに何時間奪われているだろうか? そこで、ビジネスパーソンに「簡潔化」の作法を指南する本が誕生、世界でベストセラーとなっている。全米25万部を超えた他、世界16か国以上で刊行の話題作『Simple 「簡潔さ」は最強の戦略である』より、内容の一部を特別公開します。

「仕事ができない人」が無意識にしている話し方・ワースト1Photo: Adobe Stock

言いにくいことを「遠まわし」に話す

 考えを研ぎすまし、言葉と時間を浪費するのをやめれば、コミュニケーションを飛躍的に改善できる。

▶人は自己中心的にコミュニケーションを図ろうとする傾向がある。座って文章を書くとき、人前で話すとき、話を録音するとき、私たちは相手が聞きたいことや聞くべきことではなく、自分の言いたいことを思い浮かべている。この思考を逆転させなければならない。

 例として、謝罪の場面を思い浮かべてみよう。

▶「あんなことを言ってすみませんでしたが、私にも思うところがあって、あなたの直前の行動に腹が立って……ついひどい言葉が口から出てしまって」
いい例「失礼なことを言ってしまいました。心からお詫びします」

 謝罪の意図が、不要な言葉のなかに埋もれてしまっているのがわかるだろうか?

▶連ねた言葉に隠れるのは臆病者と心得よ。

 職場や学校ではどうだろう。評価をしたりされたりする場ほど、人は本心を隠し、ゆがめた表現をしてしまう。率直になれる度胸がある人はめったにいない。

▶「きみは素晴らしいことをたくさんしているし、私にも足りないところがあるのはわかっているし、人生は厳しくて予測不能なものだが、きみの担当プロジェクトについて、ぜひとももう少し努力を見せてもらいたいんだ。このままうまくいかないようなら、パフォーマンス改善プログラムを受けてもらうことになるだろう」
いい例「一点、すぐに改善すべきことがある。主要業務にもっと力を入れるように」

 単純な予定変更について考えてみよう。あなたは思ったことをすべて口走り、自分のことをやたらと説明し、言葉と時間を浪費していないだろうか。

▶「こんにちは、ナンシー。悪いけど約束を変更したくて──毎日、仕事とかコロナ対策とか、うんざりよね──ランチのお店をあの角の素敵なベーカリーに変えたいの。私のおごりよ。だって、私ってしょっちゅう予定を変えるし、この夏はとくにそうだったから、頭にきてるよね」
いい例「ランチを角のベーカリーに変更でお願い。私のおごり」

 最悪な例になりやすいのは、本来ならばシンプルであるべき業務上の予定変更だ。

▶「ジョン、何度も打ち合わせをして延々と話し合った結果、月曜日の定例会議は経営チームの中核メンバーだけで行うことになった。知ってのとおり、この会議は大勢にとって大きなストレスの種になってきた。グループの規模がこれほど急に大きくなってくるとなおさらだ」

 こんなにごちゃごちゃした文章では要点がさっぱりわからない。

いい例「変更:月曜の定例会議の参加は経営チームの中核メンバーのみとする」

(本原稿は、『Simple 「簡潔さ」は最強の戦略である』からの抜粋です)