仕事の精度が「95%」の
公認会計士はすごいのか?

 一方で、公認会計士や税理士がコンピューターと対決して、人間の正答率が95%、コンピューターの正答率が100%だったときに、「人間なのに正確ですごいね!」と仕事を受注したりするでしょうか? 物好きな人を除き、正確性が要求され、人間が行う価値のないタスクは、人間の仕事ではなくなっていくのです。

 暗算の世界選手権や、英語のスペルの正確さを競う大会(スペリング・ビー)などは、「人間なのに正確に暗算や記憶ができてすごいね!」となります。これは業務として正確な計算や記憶が求められているわけではなく、エンターテインメントの要素があるからです。

 自動化が進むほど、この「人間なのに」市場で仕事ができることの価値はますます高まっていくのではないでしょうか。そもそも、人間の仕事の価値を見つけること自体が人間の大事な仕事であり、究極的には人間の仕事の価値を見つけられる人が生き残る、と言えるのかもしれません。

人間の仕事として残っていく仕事・その2

 人間の仕事として残っていく仕事の特徴の2つ目は、「『天然もの』の希少価値は上がり続ける」です。

 Deep Lなどの自動翻訳ソフトウェアの進化を含め、翻訳や通訳の仕事の自動化については今後も加速していくと考えています。まだまだAIによる翻訳や通訳のレベルは完全ではありませんが、一方で素人の人間が行うよりはるかにレベルが高いこともまた事実です。当然、前述の正確性や効率性が求められる業務であるため、AIによる翻訳や通訳で限りなく正確な成果が出せるのであれば、人間が行う必要はなくなっていくのです。

 私が講演などでグローバルスキルの重要性をお伝えする際に必ずいただく質問が、「自動翻訳が進化していく中、これから人間は英語の勉強をする必要があるのか?」というものです。私は、お寿司の天然ものと養殖ものの違いといった意味で、「天然ものの希少価値は今後さらに上がり続けます」とお答えしています。

 これはどういう意味かと言いますと、自分自身で英語を使いこなして話せる「天然もの」の価値と、音声自動翻訳のツールを使って外国の方と会話をするいわば「養殖もの」の価値は全く異なるということをお伝えしたいのです。ここでは、従来の人間が行ってきた行為をAIやロボットのサポートを得て行うことを「養殖もの」と例えています。

 絶対に伝える内容を間違えてはいけない交渉や契約などのプロセスを除き、一定レベルの間違いがあっても許されるような業務では、自動翻訳を活用して大体の意味が伝わればよい、といった仕事の進め方が浸透していくのではないかと思います。いわば「養殖もの」の価値でOKということです。このような差は期待値が異なることで生まれます。