手作り至上主義を打破する
「たまには出前でええやん」
このキャンペーンを実施した背景には、女性の社会進出が進み、2018年に「共働き世帯数」が過去最高を記録したにも関わらず、今なお家庭において「手作り至上主義」が根強いという現状を変えたかった、と出前館は説明しています。
TVCMにおいて、浜田CDOが忙しいお母さんや働く若者に「たまには出前でええやん」「食べんと頑張ってるって……ホンマに、頑張れんの?」とメッセージを投げ掛けていた姿が、とても印象的でした。
楽をして良い結果を得られるなら最高じゃないか、と筆者などは考えてしまうので、美味しいご飯を食べる選択肢として「出前」がもっと浸透すれば良いのに、と感じています。

松本健太郎 著
さて、共働きで家事に時間をかけられない夫婦が、時短のためにお掃除ロボットや乾燥機付き洗濯機、食洗機を購入するのは「家事をサボっている」のでしょうか、はたまた「機械化で時間を生み出しているスマートな選択」なのでしょうか。
「楽しよう」という呼びかけが前面に出すぎてしまうと、日本人は拒否反応を示してしまうのもまた事実だと思います。「熱狂」を生むという視点からは、人間の「煩悩」をただただ全肯定すればいいというわけではなく、「煩悩」を受け入れられないという消費者の気持ちにも配慮して、受け入れやすい範囲内で「怠惰」を推奨する、という「気配り」がどうやら必要になりそうです。
サボりたいのか頑張りたいのか、どっちやねん、とつい叫んでしまいそうになりますが、そういう割り切れない反応をみせるのも、また人間らしさと言えるでしょう。