それ自体が悪いとは思いません。「インスタ映え」するお弁当作りに情熱を燃やす方も多く、それ専門の本もたくさん刊行されています。

 ただ、共働き家庭が大多数になっていますから、毎日手の込んだお弁当を作るのは大変だと嘆いているお母さんも多いと思います。おかずは冷凍食品で、あとはご飯さえつめればOKという「手抜き弁当」でお茶を濁したいというのが人情ではないでしょうか。

 もっとも、冷凍食品ばかりでは子供に申し訳ないと思って、1品だけでも手作り食材を入れようとするお母さんが結構多いのです。お弁当だけでなく、晩ご飯のおかずがすべてスーパーの惣菜だと家族に罪悪感を抱いてしまうので、お味噌汁だけは手作りにする、と考えるお母さんもいるようです。

 筆者はマーケティングリサーチの仕事を通じて、家事を担当する人のこうした「申し訳ない気持ち」にたくさん接してきました。

 1品だけでも手作りのおかずを作ろう、と思う人がたくさんいる理由として、「手間と時間をかけている」ほうが「手を抜かずに愛情をこめて真面目にやっている」と感じる人が非常に多いのでしょう。

 ただし、先ほどもすこし触れたように、「何でも良いからとにかく手をかけている」のを「善」だとするのは、古い価値観の企業か、ブラック企業に濃厚に見られる考え方です。普通の企業ではたとえばITを活用して資料をより短時間で作成すれば、より高い生産性を実現したとして評価されます。

 同じことを家庭でやろうとすると批判されやすい現実がありましたが、最近は「家事のアウトソーシング」に着目したサービスが大ヒットしており、まさに「怠惰はイノベーションの源」であると強く実感させられます。

 2019年12月、日本最大級のデリバリーサービス「出前館」を運営する株式会社出前館が「日常食としての出前活用」を推進するためにCDO(チーフ出前オフィサー)としてダウンタウンの浜田雅功さんを迎え、「#たまには出前でええやん」キャンペーンを始めて大きな話題を呼びました。