京都の名門企業、オムロンが業績不振に陥っている。2024年3月期は前期比で減収減益。24年2月には、国内外で約2000人の人員削減を行う方針を発表した。オムロンは「ROIC経営」を実践する先進企業としても知られていたが、なぜ大リストラを断行する事態になってしまったのか。決算書から読み解いてみたい。(中京大学国際学部・同大学院人文社会科学研究科教授 矢部謙介)
2000人の大リストラを断行!
「ROIC経営の優等生」オムロンが陥った苦境
大手電気機器メーカーであるオムロンが業績の不振に苦しんでいる。
オムロンは、ファクトリーオートメーション(FA)向け機器を取り扱う制御機器事業をはじめとして、血圧計などを手掛けるヘルスケア事業、太陽光などのエネルギー事業を持つ社会システム事業、リレー(継電器)などの部品を製造する電子部品事業などを抱えている。京都府京都市に本拠地を置く優良企業を指す「京都銘柄」としても名高いメーカーの一つだ。2023年10月には、医療ビッグデータ収集を手掛けるJMDCを買収し、データソリューション事業に進出を果たしている。
オムロンの23年3月期の業績は、売上高が約8760億円、営業利益(=売上高-売上原価-販売費及び一般管理費〔販管費〕-試験研究開発費)が約1010億円と絶好調だった。しかし、24年3月期には売上高が約8190億円、営業利益は約340億円と大きく業績を落とすこととなった。
業績の低迷を受けてオムロンでは、24年2月に国内と海外でそれぞれ約1000人、合計で約2000人の人員削減を行うことを発表した。これは、24年3月末時点での連結従業員数(2万8450人)の約7%に当たる大規模なリストラだ。
オムロンは、早くからROIC(投下資本利益率)をKPI(重要業績指標)として経営に取り入れ、「ROIC経営」を実践している企業としても知られている。ROICは、その名の通り、投下資本(事業に対して投下したお金=有利子負債+純資産)に対してどれだけ利益を出すことができたかを表す指標だ。資本コストや株価との関連が深いため、資本効率を踏まえた業績指標として注目する企業が急増している。
そんな「ROIC経営の優等生」であるオムロンが苦境に陥った原因は、何だったのだろうか。
また、業績を大きく落としたとはいえ、24年3月期の営業利益は黒字だ。営業黒字にもかかわらず、なぜオムロンは大規模なリストラに踏み切ったのか。そして、業績回復のカギはどこにあるのか。
オムロンの決算書と、注目指標ROICの数値を読み解きながら探っていくことにしよう。