業績好調だったオムロン
23年3月期の決算書を読み解く

 それでは、オムロンの決算書を見ていく。

 以下の図は、オムロンの業績が好調だった23年3月期の決算書を比例縮尺図に図解したものだ。なお、この図ではオムロンがKPIとしているROICについても合わせて図解しているが、これについては後ほど解説する。

オムロン23/3期有価証券報告書より筆者作成
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 まずは左側の貸借対照表(B/S)から見ていこう。B/Sの左側(資産サイド)で最大の金額を占めているのは流動資産(約4870億円)だ。ここには、売上債権(受取手形及び売掛金)が約1790億円、棚卸資産が約1740億円、現預金(現金及び現金同等物)が約1050億円計上されている。いずれも会社が事業を行っていく上で必要な資産だ。

 次いで大きいのは、投資その他の資産(オムロンの決算書における「投資その他の資産」からオペレーティング・リース使用権資産、のれん、その他の無形資産を除いたもの)で、約2460億円が計上されている。ここでは、関連会社に対する投資及び貸付金(約1350億円)がその大半を占めている。

 また、有形固定資産(オペレーティング・リース使用権資産を含む)が約1770億円計上されているが、これらの多くはオムロンが保有する工場や研究開発拠点だ。

 続いて、B/Sの右側(負債・純資産サイド)についても見てみると、流動負債が約2100億円、固定負債が約570億円となっており、ここには合計で約450億円の有利子負債(オペレーティング・リース負債を含む)が計上されている。

 この有利子負債のほとんどは短期、または長期のオペレーティング・リース負債だ。現在の日本の会計基準ではB/Sに計上されないが、オムロンでは米国会計基準を採用しているため、B/Sに計上されている。こうしたことを踏まえると、オムロンは実質無借金経営であるといえる(なお、27年3月期以降に適用が検討されている新リース会計基準では、日本の会計基準においてもこうしたオペレーティング・リースの資産や負債がB/Sに計上される見込み)。

 純資産は約7310億円であり、自己資本比率(=純資産÷総資本)は約73%と極めて高い。安全性の観点から見て、オムロンは優良企業であるといえる。

 次に、損益計算書(P/L)を見ていこう。

 売上高約8760億円に対し、売上原価は約4820億円(原価率は約55%)、販管費(試験研究開発費を含む)は約2930億円(販管費率は約33%)で、営業利益は約1010億円となっている。売上高営業利益率は約11%と高い水準だ。