在来線定期は依然厳しいが
定期外はほぼコロナ前に回復
鉄道事業は人件費や保守費用、減価償却費など収入の多寡にかかわらず必要な固定費の割合が高いため、損益分岐点を超えれば利益に、下回れば損失に直結する。例えばJR東日本の単体営業収益と単体営業利益を比較すると、2018年度から2023年度までの営業費は最大でも1割程度しか変わっていない。
一方、営業収益は2018年度の約2.1兆円から2020年度の約1.2兆円まで約9000億円の減益となった。2018年度の営業利益が約3910億円、2020年度の営業損失は約4785億円なので、減収がそのまま減益につながっていることがわかる。2023年度も2018年度比で約1261億円の減収、約1380億円の減益となっている。
2024年度第1四半期の鉄道運輸収入を2018年度同期と比較すると、新幹線が約75億円(約5%減)、在来線は定期収入が191億円(約16%減)、定期外が5億円(約0.3%減)の減収だ。
2019年に消費税率改定に伴う運賃改定、2023年にバリアフリー料金制度が導入されているため単純比較はできないが、収入面で見れば、新幹線はもう一息、在来線定期は依然として厳しい、定期外はほぼコロナ前に回復といったところだ。
周知のとおり、リモートワークの定着で通勤需要は元に戻らず、少子化の進展で通学需要も先細りのため、定期利用の回復は期待できない。つまり、これ以上の増収は望み薄であり、かつての利益水準に戻ることはない。
JR東日本が高輪ゲートウェイシティに代表される不動産事業やエキナカ開発に重心を移すのも、鉄道事業の減益は非鉄道事業で補うしかないからだ。あわせて減便やワンマン化など鉄道事業の固定費削減を進めることで、事業の効率化を推進していく。好決算の背景にも今後の課題が見え隠れするのが実情だ。