エスカレートする快楽=依存
ドーパミン過剰分泌の恐怖

 ドーパミンは「報酬系」と呼ばれる神経ネットワークに放出される神経伝達物質で、目標を達成したり、人から褒められたりした時の「ごほうび」として分泌されるという説明をよく見るのですが、厳密には目標を下回った時にも分泌される場合があります。つまり、ドーパミンは予想外のことが起こった時に分泌されるのです。

 たとえば、テストを受けて自己採点で8割はできたと思っていたとしましょう。予想通りに80点だった時にはドーパミンはあまり分泌されず、予想外に100点だった時に分泌されます。

 自分の目標を大きく上回ることができたのですから、それは気持ちがいいですよね。一方で、予想を下回って60点だった時にも「予想外の出来事」に対してドーパミンが分泌されます。こちらは、目標達成に向けて「次はもっと頑張ろう」と意欲を高めるために分泌されるのです。このように目標を達成してもしなくても「快楽」が得られ、それがやる気や意欲のアップにもつながるのですが、一方で、過剰になると様々な依存の原因になります。

図表:自己採点80点同書より転載 拡大画像表示

 よく言われるのが、ギャンブル、ゲーム、薬物、アルコールなどへの依存です。

 たとえば、ゲームもギャンブルも勝てばうれしいし、負けると悔しいものです。そして、たとえ負けても「次こそは!」と考えることでやめられなくなりますよね。何かの刺激で快楽を覚えると、また次の刺激が欲しくなってくるのです。

 しかも、依存が怖いのは、それを繰り返すことで耐性が生まれてしまうことです。つまり、同じことの繰り返し、同じ量の摂取では、快楽が得られにくくなってきます。そのために、どんどんのめり込んでしまうのです。

 ドーパミンは、適量であれば物事にポジティブに取り組めるように作用するというメリットがありますから、とても重要な脳内物質です。しかし、過剰な分泌には特に気をつけたい脳内物質でもあるのです。