KPIで投資効果を測定
大企業との連携でさらに成長
このような形で、他にもいろいろな事業・企業のインパクトを評価しています。中間的なKPIが達成されている会社がかなり出てきて、投資先も増えています。
例えば、フードロス削減サービスの会社では、その会社の存在で累計100万食が捨てられずに済みました。介護業界を新たな人材でサポートする会社だと、累計4100人の人材を新たに供給しました。こうしたKPIを持って、社会課題解決に向けて進捗しているかどうかを計測しています。
また、大手企業と連携して、事業をさらに成長することも推進しています。例えば丸井グループさんとは、talikiファンドに出資を頂くとともに、ファンドの投資先でサステナブルなブランドを運営するスタートアップを数社募り、マルイさんの実店舗で期間限定のPOPUP(ストア)を複数回開催しました。双方にとって、新しい顧客層の開拓と売り上げの増加につながっています。
さらに、オウンドメディア(https://taliki.org/)も運営しています。「起業に興味がある」「社会課題に取り組む人を知りたい、応援したい」「ビジネスのヒントを探している」という人向けに、社会起業家や社会課題解決ビジネスを紹介しています。これまで200社以上を取材し、それぞれの志、ビジネスモデル、マーケティングなどを記事にしてきました。
最後に、社会課題解決の市場機会がいかに広がっているかをお伝えします。社会課題解決の事業は、最初は図のTier3のように、外部からの圧力による取り組みが多くあったかなと思います。外部とは政府とか機関投資家とかです。それだと、社会全体としてまとまれない社会課題解決となってしまうので、とてももったいないのです。自分たちの利益にならないし、社会にとってもインパクトはさほど大きくない。
Tier2は、リスク管理としての社会課題解決です。例えば気候変動対応で、自社の事業における温室効果ガスの排出抑制は、そうしない企業のレピュテーションリスクが高まるなどで、もはや当たり前になっているかと思います。もっと身近な事例では、企業の地元経済が衰退したら住民の購買力が下がって、そこで事業展開する企業の売り上げも下がってしまうから、地元の社会問題解決は従来以上に大切だと認識されるようになっているかと思います。
これらの段階を経て、私は今、「市場機会としての社会課題解決」のTier1に来ていると思っています。なんだかんだと言って、日本は豊かになり、必要に迫られる商品も昔ほど多くはありません。この成熟社会で最後のフロンティアが、社会課題解決市場なのです。
この未開拓市場に挑戦して成功したら、ブルーオーシャン(競合が少ない市場)で独り勝ちできるわけです。という意味で、私は皆さんもぜひこの社会課題解決をビジネスチャンスとして捉えて頂いて、共創していければなと思っております。(了)