これまでサラリーマンの副業を「事業所得」として申告するのか雑所得として申告するのかの税務上の明確な線引きはありませんでした。

 しかし、2022年に国税庁が「取引の記録を帳簿で残すこと」という条件で、「事業所得としての申告を認める、という通達を出しました。

 この取引記録というものは、ノート記載など簡易なものでもいいということになっています。ただし事業の実態がないのに、取引記録だけを残してもダメです。

 副業を事業所得で申告するには、

・事業の実態があること
・取引の記録を帳簿で残していること

 が条件だといえます。

事業の実態がなければ赤字は
認められないことに要注意

「サラリーマンが事業をして赤字を出し、給料所得から赤字を差し引く」ときには、「事業の実態」がなければなりません。

 税金の世界では、「社会通念上」という考え方があります。

 明確な線引きがされていない部分では、「社会通念上」に照らし合わせて是か非かが判断されるのです。

 なんの事業の実績もないのに、ただ届け出を出すだけで、「私は事業をやっています」ということにはならないのです。

 まったく収入がない、実態がないのに、経費だけ計上してきて、それをすんなり認めるほど、日本の税務当局はお人好しではありません。

 たとえば、何の事業活動もしていないのに「ネットで通販しています。売上はゼロで、経費が300万円かかりました」と言っても、通用しないのです。

 税法では、この「社会通念上」という判断基準は、裁判所の判例でも認められているのです。法的に明確に「黒」を記されていなくても、社会通念上に照らし合わせておかしいものは、「黒」と判断する、ということです。

 だから、普通のサラリーマンが、実態のない副業を適当につくって、節税をしようとしても、それは認められない可能性が高いのです。

 ただし、逆に言えば、事業の実態があれば、いくら経費がかかっていても赤字は認められるのです。たとえばYouTubeの制作のために、高価な機材をそろえたけれど、アクセスが伸びず、大きな赤字が出た人がいたとします。しかし、ちゃんとYouTubeを制作し、それなりの頻度で更新するなどの事業活動を行っていれば、それは事業として認められるのです。

 くれぐれも、「事業の実態がなければ認められない」ということについては注意しておきましょう。