クレジットカードは自分名義であっても、引き落としは妻の給与口座であり、カード明細を見ればどこで何を買ったかが一目瞭然だ。それを恐れる以上に、自分ではなく妻が稼いだお金で、スーパーで売られている食料品などの生活必需品の購入ですら買うことを躊躇していた。

 別の男性は、帯同して来た身として、自分にもお金を使う権利はあると強く思いながらも、外に飲みに行くことや酒を購入することは極力控え、なるべくお金を使わないようにしていたという。稼ぐことができなくなった男性の苦悩がうかがえる。

 私も、米国在住中に同様の経験がある。家族に必要なものを買う際にお金を使うことにはそれほど引け目を感じたことはなかったが、妻の誕生日プレゼントを購入する時は、妻の口座から引き落とされるクレジットカードを使うことに強い抵抗感があった。そのため、日本に残した私の銀行口座に紐付けられた日本のクレジットカードを使って買ったのだった。自分のプライドが拭いきれなかった記憶がある。

 専業主婦が、日常の買い物や夫へのプレゼントを買うときに、駐夫が抱いたような複雑な思いに駆られることがあるのだろうか。夫が稼いだお金を自由に使うことに、何かしら負い目を感じるのだろうか。家事・育児を担う責任ある立場として、それらを日々こなしている対価として、誇りを持って家庭に必要なものを購入している人が多いのではないか。

海外赴任に同行することは
「妻の付属物」に成り下がること

 駐夫は、現地生活においては、文字通り主夫として、食事をつくり、子どもの世話をし、寝かしつけに追われていた。給与には換算できない家事・育児を担当し、家庭への貢献度という点では、専業主婦の方々と何ら変わらないと考える。

 それでも、「男の甲斐性」が邪魔をする。外で稼げなくなった事実が男を苦しめる。

 ある駐夫は、妻と喧嘩したときに吐かれた言葉が、ずっと頭から離れない。