調査では、「週当たりの労働時間が短いほうが、男女を問わず幸福度が高い傾向がある」とした上で、日本の男女間における労働時間の差と、幸福度を巡る男女間の差のいずれもが、調査対象国・地域の中で最も広がっていることを示した。長年にわたり染みついた企業文化や長時間勤務に代表される日本的雇用慣行が、働く男性の幸福度に影を落としている現実が浮き彫りになり、労働時間と幸福の相関関係が示された興味深いデータであろう。

 かくいう私も、以前は長時間労働が当然の職場で働いていた。記者という仕事の特性上、毎日同じオフィスに出勤し、周囲を上司や同僚に囲まれ、自分のデスクで働き続けるという形態ではない。記者クラブなどを拠点とし、朝から深夜まで自由に歩き回ることができたものの、残業が毎月100時間を超えるのが通常で、時には180時間ほどに達した。

 体感では、残業が150時間を超すと、肉体的にも精神的にも相当な負荷がかかってくる。年齢を重ねればなおさらのことだ。幸福か不幸かなどと考える余裕もなく、とにかく目の前の業務をこなさなければいけないという強迫観念に駆られていたような記憶がある。

共働き男性に見られる
2つのタイプとは

 子どもが生まれてからも、そうした状況では、なかなか家事・育児に主体的どころかサポート的にも取り組めるはずもなかった。妻は時短勤務に転じ、私は普通に仕事を続けていた。当時を振り返ってみれば、仕事の面白さや醍醐味は感じていたとはいえ、恐らく「幸せを感じている」と答えられなかっただろう。

 1日のうち、かなりの時間を占めることになる仕事について、半数以上が幸福を感じられないのはなぜなのか。本質的な問いに、真剣に向き合う必要があるのではないだろうか。

 米国では、1980年代後半から家事・育児を積極的に担う男性が目立ち始めた。その背景には、産業構造の激変を受け、男性が請け負ってきた仕事が減少し、賃金が低下したために妻も就労せざるを得なくなったという切迫した事情があった。