共働きの子育て夫婦につきまとう「家事分担」問題、どのようにしていくのがベストなのだろうか。
夫婦のどちらがコロナにかかり家事が回らなくなったことで、見て見ぬふりをしていた問題が一気に露呈したという話もよく耳にする。こうした「有事」における家事オペレーションも、夫婦・家族の課題でもある。
こうした問題を解決するヒントが、マイクロソフトのアジアリージョンマネージャーとして活躍する著者(イ・ソヨン)が書いた『パートナーシップーマイクロソフトを復活させたマネジメントの4原則』にあった。
マイクロソフトのアジアリージョンマネージャーとして活躍する著者は、2人の子どもを育てるワーキングマザーでもある。
マイクロソフトの復活を支えた競争よりも助け合いという考え方は、親子や夫婦関係にも応用できると著者は語る。
著者と同じく2児を育てるワーキングマザーであり韓流誌編集者の野田智代さんが、本書の考え方を自身の家事・育児にどう取り入れ、家事分担にまつわる課題をどう解決していったのかをレポートする。
日本も韓国もしんどさは同じ!?
ワーキングマザーあるある
共感するところの多い『パートナーシップ』。
この本を読み進めながら「ワーキングマザーあるある」を発見するのも、楽しみのひとつになった。
著者のイ・ソヨンさんは、近くに頼れる親族もいない環境で、生後3ヵ月の子をベビーシッターに預けて仕事復帰している。
夫がフリーランス俳優というイさんの家庭のように、夫婦ともにフリーランスである我が家でも、まだ首も座らない子を保育園に託した経験があり、イさんの七転八倒の日々を想像して、身につまされる思いになった。
疲れて帰宅しても「ママ! ママ!」と呼ばれて休めない、子どもを寝かしつけてようやく家事をこなし、バタンと布団に倒れ込む。
来年、小学校に上がるのにまだ文字が読めない。
ステイホームを機に野放しにしていた問題が露呈する……。
ほんの一例だけど、本書のエピソードはどれも「あるある」とうなずいてしまうものばかり。
韓国のワーママの話だが、どこも同じなんだと思えて妙な安心感を覚え、読み終えた後には、イ・ソヨンさんという頼もしい戦友を得たような気分になっていた。
何よりも、嵐のような日々をくぐり抜けて、大企業の管理職に上りつめた彼女の涙ぐましい努力を、心からリスペクトしたい。
本書に登場する「この家事、どっちがやる論争」も、「あるある」のひとつだ。
「家事が日常的なこと、些細なことの連続だからこそ、のちに大きな火種となりうる」と、イさんも言っているとおり、夫婦関係を根底から揺るがすことにもなりかねない。
向かいあって論争できるならいいのだが、「それくらいやってくれてもいいのに」「今日もまた私が」と、心でつぶやく場合のほうが恐ろしい。
「子どもが成長したら、離婚するの」と、冗談か本気かわからない決意表明をしてくるママ友は、私の周りだけでもひとり二人ではないのだ……。
我が家の家事分担の黄金比率を考える
悩めるワーママたちにぜひ読んでもらいたいのが、本書PART3の「家事分担の黄金比率(ちょうどいいバランス)とは?」だ。
食事の支度、皿洗い、買い出し、掃除に洗濯、ゴミ出し、子どもたちの宿題チェックなど、あらゆる家事をリストアップし、1日単位の所用時間を整理し、偏ることのないちょうどいいバランスで担当決めをする方法だ。
(※編集部注/以下のように家事と1日の最小所要時間を書き出し、リストをもとに、一つひとつ担当分けをしていく。担当決めの審判は子どもたちにお願いする、というのが本書で紹介されているやり方)
イさん一家の家族会議の模様が、議事録のように記されているが、単に時間だけで配分するのではなく、効率や得手不得手、在宅や外出のタイミングなども考慮されている点は、改めて頷かされる。
パパとママ、どちらが担当すべきなのか決着がつかない場合は、子どもたちにジャッジを委ねた、というのも興味深い。
実は、コロナ禍で生活パターンが変化した我が家でも、これに似たことを取り入れたことがあり、一時の苦労からずいぶんと解放された。
私が料理が得意ではないことを見かねたのかは定かではないが、食事の支度は、すべて夫が担当してくれている。
この苦役を免除された私からすれば、「あとはどんなことでもします!」と気合も十分で、これ以上、望むこともない。
これぞ我が家の黄金比率。凸凹ブロックがうまくハマった奇跡の分担に、ひたすら感謝している。
おかげで洗濯物をたたむ私の手はいつも軽やかで、子どもの宿題をチェックする時間も、無性に愛おしく感じられる。
だがなんと、ちょうどこの原稿を書いている最中、我が家の料理隊長である夫がなんとコロナに感染!
私と2人の子どもは、突如、自宅待機を余儀なくされ、いくつもの締切りを抱える私は血の気の引くような感覚に襲われたのだが、さっそく本書が大活躍。
イさんが、かつてのステイホーム期間中に実践した家庭の立て直しをお手本に、私が家庭の支配人に昇格。
待機期間中の目標を立て、2人の子どもをそれぞれ、おそうじ隊長、皿洗い隊長に任命した。
隊長と呼ばれた子どもたちが、俄然、やる気を出したのも微笑ましい。
本書を手にしたときは、かの大企業、マイクロソフトを再興させた「パートナーシップの4原則」が、まさか子育てにも生かせるなんて半信半疑だった私。
読み終え、行動に移してみると、これまで気づかなかった子どもの成長をまざまざと見せつけられることになり、胸がじわりと熱くなった。
この本がパートナーとなってそっと寄り添い、応援してくれているようにも感じている。
1977年、愛知県生まれ。立命館大学文学部卒業。1999年から1年間、韓国・延世大学に語学留学。『KNTVガイド』等、韓流誌の編集者を経て、2019年に株式会社クリエイティブパルを設立。韓国ファン専門の自分史制作サービス「韓流自分史」を立ち上げる。自分史活用アドバイザー、写真整理アドバイザー。駐横浜韓国領事館オンラインパートナーとして、イベント業務にも関わる。配信ラジオ「韓LOVEステーション」では、「のだっち」の愛称で活動中。2児を育てるワーキングマザー。
Twitter:@hanmemo