首相、総務相、国会のチェックを
受けるNHKに対してBBCは……?

 公共放送局としてのBBCとNHKは、国からの独立性をどう確保しているのだろうか。

 NHKのウェブサイトに掲載された「国との関係」についての回答を見ると、首相・政府が決める項目が非常に多い。毎年度の収支予算や事業計画等、決算、業務報告書をまず「総理大臣に提出」したのちに内閣から国会に提出されて審議・承認を受けるなどする。「受信料に関する規定(放送受信規約、放送受信料免除基準)の認可や、放送局の免許等」は総務大臣が行う。

 BBCは政府から独立した存在であるために王立憲章を基にして発足したが、憲章の更新、受信料制度の維持や値上げ率などは時の政府との交渉によって決まる。これまでに値上げ凍結はあったものの、前年よりも額面上低い金額が提示された例はない。しかし、日々の運営に最も大きな影響を与える受信料収入の値上げ率が時の政府によって最終的に決められてしまうので、その首根っこは「お金」によって、政府に押さえつけられている。ただ、財政面での救いの一手としてBBCには国際市場での商業活動が認められており、受信料収入の不足分を商業収入で一部補っている。

 放送局への規制についての日英の違いは、英国では放送・通信業の監督・規制を独立組織「放送通信庁(オフコム)」が担うのに対し、日本では総務省が所管する形となる。独立組織が規制・監督をする国と政府がその役割を担う国とでは、政治的干渉の面で大きな差が出てくるのではないか。

 NHKとBBCの違いについて、メディア研究者に聞いてみた。

 中村美子氏は、NHK放送文化研究所で長年にわたりBBCの制度やサービスを調査研究してきた。中村氏によると、法律面で両者に大きな相違はないが、監督と規制という面でみると、BBCはオフコムの権限が確立し、政府の関与が徐々に縮小されてきたが、「日本には独立規制機関はいまだに存在せず、所管の総務大臣の許認可という規制の仕組みが続いている」。「いまだに」というのは、「世界の民主主義国の中で放送通信分野の独立規制機関を有しない国は日本くらい」「日本では放送内容について放送事業者による自主規制機関が活動しているが、独立規制機関が制度化されることは、政府との関係だけでなく、視聴者保護という点でも重要」であるという。