回答のポイント:ターゲット顧客の「不」の体験を想像し、ニーズを洞察する
新規サービスを展開する目的やターゲット顧客を明確化し、機内における「不」の体験(不便や不安、不快など)を想像しましょう。

 以下が解答例です。

大手航空会社による新規サービスの目的を具体化する

 クライアントである大手航空会社は、航空機を用いた旅客事業を基幹事業としており、国内線や国際線を利用する乗客からのチケット収入が売上の大半を占めていると考えます。

 他にも、貨物を輸送する事業やクレジットカードなどの金融事業も展開しています。

 ここで私は、機内における新規サービスを検討する大きな目的として、「旅客事業の売上を向上すること」と設定します。

 さらに、目的を達成する方向性としては、旅客事業の売上を次のように分解し、(A)満足度向上による客数増加(B)1人あたりの座席料金やオプションサービス料金の向上の2つがあると考えます。

人気のコンサル業界、地頭力を試す面接「大手航空会社による機内での新規サービスを検討せよ」どう答える?売上を分解する

ターゲット顧客を想定し、「不」の体験を洗い出す

 航空機を利用する主な顧客として、平日はビジネスパーソン、休日はビジネスパーソン以外の一般客が多いように思えます。

 また、一般客の旅行と比較すると、ビジネス利用の方が価格よりも移動の快適さなどを重視しており、格安航空会社よりも大手航空会社が選ばれやすいと思います。

 特に、経営者などはより快適に過ごせるビジネスクラスを利用しているのではないでしょうか。

 これらを踏まえて、今回の検討では週の大半を占める平日の主要な乗客であり、大手航空会社と親和性の高いビジネスパーソンをターゲットとして新規サービスを検討します。

 まず、「機内設備」「サービス(食事/客室乗務員など)」「その他の周辺環境」に分けて、ビジネスパーソンが不便や不満に感じている点を洗い出してみます。

人気のコンサル業界、地頭力を試す面接「大手航空会社による機内での新規サービスを検討せよ」どう答える?ビジネスパーソンが感じている不便や不満を洗い出す

 次に、これらの不便や不満に感じている点を解消し、機内における体験価値を向上するような新規サービスのアイデアを検討します。

人気のコンサル業界、地頭力を試す面接「大手航空会社による機内での新規サービスを検討せよ」どう答える?不便や不満を解消するアイデアを出す

新規サービスのアイデアを評価し、提案内容をまとめる

 では、実効性と実現可能性の観点からこれらのアイデアを評価して、次の表にまとめたいと思います。

人気のコンサル業界、地頭力を試す面接「大手航空会社による機内での新規サービスを検討せよ」どう答える?「実効性」と「実現可能性」の2つの観点から、アイデアを評価する

 実効性に関しては、新規サービスの目的である「(A)満足度向上による客数増加」「(B)1人あたりの座席料金やオプションサービス料金の向上」という2つの方向性に対して、十分に寄与できるかを検討します。

 また、実現可能性に関しては、導入にあたってどの程度のコストがかかるのか、初期投資を回収することは可能かについて検討します。

 結果、新規サービス①②については、ターゲットの満足度向上、チケット収入の増加が期待できますが、新規サービス①はビジネスクラスと食い合いになる恐れがあります。

 また、新規サービス③は有料オプションの収入、新規サービス④は顧客満足度の向上が期待できますが、新規サービス④は既存の情報提供サービスとの差別化が難しいと感じました。

 結論として、まずは機内設備や周辺環境に関する体験価値の向上が期待できる新規サービス②、提供サービスに関する体験価値の向上が期待できる新規サービス③に取り組むべきと考えました。

新規サービスを実現するためのロードマップを検討する

 最後に新規サービスを実施するロードマップを検討します。

 まず準備期間として機内設備の入れ替えや機内オペレーションの変更に取り組む必要があります。

 その後は、プロモーションを行うことで新規サービスに対する認知を高めていくことが求められますが、ビジネスパーソンがよく目にする経済誌やウェブサイトでの広告に加えて、チケットの予約時や窓口での案内を徹底することが効果的と考えます。

 一部の機体やフライトからサービスを開始し、利用実績や顧客からの声を踏まえてサービス内容を改善し、広く展開していくとよいのではないでしょうか。

 以上となります。ありがとうございました。

面接官からの質問

──洗い出した不便や不満に感じている点を解消する新規サービスとして、他にアイデアはありますか?

 ビジネスパーソンに固有のものではなく、他の乗客とも共通する快適なフライトに主眼を置いて検討すると、様々なアイデアが出てきます。

 たとえば、高品質なアイマスクやネックピローなどの機内で使用できるアイテムを中心とした機内販売の拡充や、フライト時間を楽しめるゲームの提供などが考えられます。

──新規サービスの実行に際して、特に確認すべきことは何ですか?

 既存サービスとの食い合いと、初期投資の回収期間について確認したいです。

 前者に関して、私は新規の座席クラスやワーキングデスク付きの座席などを検討しましたが、これらのサービスが人気となることでビジネスクラスなどの利用が減らないか、詳細に確認する必要があります。

 後者に関しては、新規サービスに必要な初期投資額と得られる利益を想定し、どの程度の期間で投資を回収できるかを確認すべきです。

──ターゲットをビジネスパーソンではなく、子ども連れのファミリー層と設定した場合、どのようなアイデアが考えられますか?

 ファミリー層の「不」の体験を想像すると、たとえば、機内設備に関して授乳スペースやおむつを変えられるスペースがなかったり、子どもに合った食事や家族で楽しめる娯楽が少なかったりします。

 したがって、授乳やおむつ交換スペースの提供や、ゲームやコンテンツ配信サービスの提供などが機内における体験価値の向上につながると考えます。

(本稿は『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』から一部を抜粋・編集したものです)