首相である岸田文雄の事実上の退陣表明によって号砲が鳴った自民党の総裁レースはあっという間に“定員オーバー”の状態になった。そのきっかけを与えたのが8月15日の閣僚懇談会後の岸田発言だった。
「皆さんの中にも総裁選に名乗りを上げることを考えている人がいると思う。気兼ねなく堂々と論戦を行ってほしい」
岸田発言に触発されるように、閣僚の意欲表明が相次いだ。従来から出馬意欲を隠さなかったデジタル相の河野太郎(61)、経済安保相の高市早苗(63)だけでなく、外相の上川陽子(71)、官房長官の林芳正(63)、さらに能力の高さについては誰もが認めていたものの“無印”に近かった経済産業相の齋藤健(65)も意欲をにじませ、総裁レースに現職閣僚が5人も浮上する異例の事態になった。
加えて幹事長の茂木敏充(68)、岸田内閣で閣僚を務めた前経済安保相の小林鷹之(49)、元総務相の野田聖子(63)も岸田に仕えた面々だ。このほか岸田政権下では非主流の立場に身を置いてきた元幹事長の石破茂(67)、元環境相の小泉進次郎(43)、菅義偉内閣の官房長官だった加藤勝信(68)もようやく沈黙を破り、「具体的な動きをしていきたい」と述べ、出馬に向けて舵を切った。ファンファーレとともにゲートが開かれ、一斉に走りだした競走馬のようだ。
岸田は周辺にこう漏らしている。
「描いたシナリオ通りだ」