神経戦が佳境の自民党総裁選、岸田首相に残された“裏メニュー”7月28日、パリ五輪柔道女子48キロ級で金メダルを獲得した角田夏実と電話で話し、祝意を伝える首相の岸田文雄[代表撮影] Photo:JIJI

 パリ五輪の熱戦が続く。いつものこととはいえ、テレビ放送は五輪一色。NHKは総合テレビだけでなくBS、さらに試合中に総合テレビの番組と重なると、Eテレまで動員する“五輪専門チャンネル”の様相を呈している。首相の岸田文雄もパリ大会で最初の日本人金メダリストになった柔道女子48キロ級の角田夏実にお祝いの電話を入れた。この状況は8月11日の閉会式まで繰り返されるに違いない。

 ただ五輪一色の中で自民党総裁選も着実に動き始めた。しかもそれを主導したのは他ならぬ岸田だった。岸田は公の場で総裁選に触れることは一切なし。「当面の課題に全力」がその理由だが、どっこい着々と再選への布石を打ち始めた。

最初の一手は総裁選の選挙管理委員の人選

 最初の一手が総裁選の選挙管理委員の人選だ。衆院議員8人、参院議員3人の計11人が7月26日の総務会で決まった。選管委員は立候補の資格を失うだけでなく候補者の推薦人にもなれない。加えて選挙応援もできなくなる。

 11人の内訳を見ると、無派閥の5人を除くと安倍派3人、麻生、茂木、二階の各派閥から1人ずつ。これに対して岸田派はゼロ。前回の総裁選で岸田と争った経済安全保障担当相の高市早苗の推薦人だった2人が選管委員になった。ただでさえ推薦人の確保が難しい無派閥の高市にとっては貴重な“戦力”を奪われるのに等しい。自民党幹部は「人選は岸田首相が主導して決めた」と語る。

 選管委員長は裏金問題を党紀委員長として仕切った谷垣グループの逢沢一郎が務める。委員長には総裁選の日程決定などかなりの裁量権が与えられている。