夜は都会でも助ける人が増加する
人の親切心はどこでも変わらない

 米国カリフォルニア州立大学のポール・スコルニックは、ロサンゼルスの交通量が多い道路と、田舎道で車があまり通らない道路の両方で、男性、または女性アシスタントが路肩に車を止めて、援助を求めるという実験をしたことがあります。

 その結果、交通量の多い所では、助けてもらうまでに23.49台が通り過ぎましたが、田舎道では助けてもらうまでに、2.56台しか通り過ぎませんでした。この結果だけからすると、「やっぱり都会の人は冷たいんだなあ」と思うかもしれません。けれども、そうとはいえません。

 スコルニックは時間帯を変えて同様の実験をしていました。午後2時から4時までと、午後8時から10時までです。

 すると、午後8時から10時では、都会でも助けてくれる人が多くなることがわかったのです。夜になると当然交通量が少なくなってくるので、そういう状況でなら、都会の人も困っている人を助けるのです。「自分が助けてあげないと困るだろう」という責任を感じるからです。

 夜が更けてきて、ほかに誰もいない状況、すなわち責任の拡散が生じないときなら、都会の人も助けるのです。田舎から都会に出てきたばかりの人は、「都会の人は冷たい」というイメージを持っていて、いろいろと心配になるかもしれませんが、そんなに心配しなくても大丈夫です。都会の人だって、田舎の人と同じくらい親切な心はちゃんと持っているのです。

社会的孤立が広がっているのは
日本だけではなくアメリカも同じ

「孤独死」という言葉があります。独りきりで、誰に看取られることもなく、寂しく死んでいくというニュアンスがこの言葉にはあります。田舎のコミュニティでは、どんどん人が減っていき、孤立した生活者が増えているそうです。

 では、東京のような大都会なら孤独を感じないかというと、そんなこともなくて、社会的に孤立していると感じている人は少なくありません。こういう現象をニュースで見聞きしたりすると、「なんだか日本は、どんどん孤立が広がっているみたいだな……」と思われるかもしれません。