けれども、外国のデータに目を転じてみると、社会的な孤立が広がっているのは日本だけではないということがわかります。そう思うと、ちょっとだけ安心できませんか。

 米国アリゾナ大学のミラー・マクファーソンは、「アメリカにおける社会的な孤立」という論文を発表しています。米国では、代表的な国民のサンプルを集めた、ジェネラル・ソシアル・サーベイ(GSS)という大規模な調査が行われています。1985年と2004年のGSSのデータを使って、約20年間でどれくらい孤立した人が増えているのかをマクファーソンは分析してみました。

「あなたには、大切なことを話す人が何人くらいいますか?」という質問に対して、1985年には、平均2.94人という答えが返ってきました。ところが2004年の調査では、これが平均2.08人へと減っていました。

 また、「大切なことは誰にも話さない」という人は、1985年にはわずかに10.0%で、「1人にだけ話す」という人が15.0%でした。ところが、2005年には、「誰にも話さない」が24.6%と大きく増加し、「1人にだけ話す」も19.0%に増えていました。

 アメリカ人というと頻繁にパーティーをするといったように社交的なイメージがありますが、わずか20年間ほどで大きく変化しているようです。日本と同じように、自分1人の世界に引きこもって他人とはできるだけ付き合わない、という人がじわじわと増えているのです。

「最近の日本人は、みんな自分1人で好き勝手に生きていて、孤立している」ということを懸念している人がいるかもしれません。これでは社会やコミュニティが成り立たなくなってしまう、と本気で心配している研究者もいます。

 けれども、孤立している人が増えているのは、特に日本でだけ起きていることなのではなくて、アメリカでもそうなのです。ひょっとすると、先進国ではどこでもこういう現象が見られるのかもしれません。