デジタル給与導入のメリット・デメリット
企業の負担は増える…?

 最後に、デジタル給与導入のメリット・デメリットについて総括しましょう。企業にとっては、先に述べたように従業員との協議や労使協定の締結、希望者への個別同意などに加えて以下のような手間や費用負担が増えそうです。

・運用ルールの構築
・システムの導入
・支払方法の管理
・就業規則、給与規則等の改定
・雇用契約書や労働条件通知書の記載事項の変更

 これだけ面倒もかかるデジタル給与の導入ですが、果たして普及するのでしょうか? 普及に向けて重要なカギとなるのは、人事基幹システムとの連携により企業側の負担を減らし、利便性を高めることでしょう。

 一例として、オービックビジネスコンサルタントとPayPayが、人事基幹システムの給与のデジタル払いに関する機能連携を発表しています。これにより、従業員が給与をPayPayで受け取る際、口座番号の入力ミスが減り、企業のバックオフィス業務がより簡略化されるとのことです。

 日本ではキャッシュレス決済や送金サービスの多様化が進んでいるものの、各国と比較するとその普及率は4割程度にとどまっています。国は、この普及率を8割に上げることを目指しており、給与のデジタル払いはその一環です。

 社労士の筆者が知るところでは、数年前からクラウドサービスを導入し、交通費や交際費、備品の購入などの経費精算にデジタル払いを採用している企業もありました。ただし、給与については労働基準法の賃金払いの原則により規制されており、デジタルマネーで支払うことができませんでした。

 昭和の給料袋を手渡ししていた時代から、平成では銀行口座への振り込みが主流となりました。そして、令和にデジタル払いが解禁された流れです。きっとこの先10年後には、給与のデジタル払いが一般的になっているのではないでしょうか。