近年「クラウドソーシング」という言葉を、よく耳にするようになった。「クラウド」とは「群衆」のことである。ネットを介して、みんなの知恵(あるいはなんらかの資産やスキル)を集約させて、ひとつの目的を完遂させるといった意味合いに使われる。
これはそれほど新しい発見というわけでもなく、古くは「Linux」の例がある。一人の大学院生が作ったOSを、ネットユーザー達が協力してどんどんブラッシュアップしていったのはあまりにも有名な話だ。また「Wikipedia」なども、その典型例である。
ソーシャル翻訳サービス「コニャック」。ビジネスレターの定型文や時候の挨拶、ハリウッド俳優へのファンレターの翻訳など、様々な依頼が舞い込んでいる。 |
現在ではビジネスとしての活用も進む「クラウドソーシング」だが、ユーザー相互の“善意”に根ざしているケースも多い。それらを上手に利用すれば、自身のスキルアップに役立てることも十分に可能だ。そこで今回は「言語」をテーマにしたユニークなクラウドソーシングサービスを紹介したい。
“相互添削型SNS”と銘打たれた「Lang-8」は、参加ユーザー同士が母語以外で書いた日記を添削し合うというサイト。ここでは例えば、英語を習得したいと考えている日本人ユーザーが書いた英文を、英語を母語とする外国人が添削してくれる。逆に、外国人が書いた文章を添削してあげることも可能だ。お互いに切磋琢磨することで、より学習効率も上がり、そのうえネイティブの外国人と知り合うチャンスもできる。従来であれば、敷居の高かった語学学習の壁を、みんなのスキルを少しずつ持ち寄ることによって解決してくれるというわけだ。
ちょっとした翻訳を頼みたいという場合は「コニャック」というサイトを利用するのも便利だ。こちらはユーザー参加型のソーシャル翻訳サービス。500文字までの原文をアップすると、その言語を得意とする登録ユーザーが翻訳してくれる。翻訳料はポイント制になっていて、一件当たり30~100ポイント(1ポイント=1円)を依頼者が設定する仕組み。品質のばらつきは否めないものの、明らかに間違った訳の場合などは、翻訳後12時間以内であれば支払いを拒否することも可能だ。現在は、英語や日本語はもちろん、中国語、フランス語、ドイツ語、韓国語などおよそ30言語に渡って翻訳者が登録している。海外ニュースサイトの翻訳など、個人使用の資料として利用するのであれば、十分に実用に耐えうるものだろう。
「クラウドソーシング」の利点は、ネット環境さえ整っていれば、世界中どこからでもプロジェクトに参加できる点。企業にとっては、適切なスキルを持つ人材を安価に調達できるメリットがある。一方、これまで企業に守られてきたビジネスパーソンにとっては、世界中にライバルが出現したようなものでもある。ネット公用語が日本語ではない現状、「クラウドソーシング」時代を生き抜くためにも、“みんなの知恵”を拝借して語学力アップに努めてみてはいかがだろう。
(中島 駆)