このような指示では、資料の書き手は、本来ならば資料を書き始めることすらできないはずだ。当然、指示を出す側が、目的を具体化することが求められる。

 目的が明確であっても、結論と根拠を明確に書いていない資料は多い。これは基本的には、資料の書き手側の問題だ。自分の考えを明確に示すことを避けたり、あるいは結論の根拠を考えきれていないと、しっかりと目的に対応する結論と根拠が書けないので、資料には関係のない情報だけが並ぶことになる。

 1つ架空の事例を挙げてみよう。あなたは文房具会社に勤めていて、新しいボールペンを共同で販売する提携先を探している。ターゲット顧客は会社員であり、ネット通販や文房具店で売るのではなく、実際に文房具を使う場面を用意し、体験をしてもらったうえで販売したいと考えている。

 ボールペンを使う場所として、4社の候補が挙がっており、提携してくれそうな会社を1社に絞りたいと思っている。あなたは部下に「提携候補先に関わる情報をまとめてほしい」と指示を出した(1社に絞るためにということを明示していないことに注意)。1週間後の会議で部下が出した資料は図表0-1のようなものだった。

図表0-1同書より転載 拡大画像表示