マンガでたのしく!国会議員という仕事同書より転載

『ラブひな』や『ネギま!』などの大ヒット作を手がけたマンガ家・赤松健は、なぜ国会議員を目指したのか。その背景には、クリエイターとして表現の自由を守るという使命がありました。出馬の決意から、厳しい選挙戦を経て、トップ当選を果たすまでの半年間を振り返ります。本稿は、赤松 健『マンガでたのしく!国会議員という仕事』(筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。

多忙な週刊連載のかたわらで
政治活動に参加していた

 自分で言うのも恐縮ですが、『ラブひな』(1998~2001年)や『魔法先生ネギま!』(2003~2012年)、『UQ HOLDER!』(2013~2022年)などのヒット作に恵まれ、累計発行部数は5000万部以上と、マンガ家としてはかなり成功したほうだと思います。

「そんなマンガ家がなぜ国会議員に……」と思われるかもしれませんが、実はマンガ家時代から政治活動には積極的に参加していました。

 たとえば、2010年に東京都が「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例案」を提出したことがありました。この条例改正案にはいろいろな側面が含まれていたのですが、表現規制を強める危険性があり、ごく簡単に言ってしまえば、子どもにふさわしくないと思われる表現のある本を規制しようという動きがあったのです。

 当時の私は週刊連載が多忙を極めていたため、反対活動の中心にいたというわけではなかったのですが、表現活動の萎縮が進まないよう、SNSやネットの配信番組を通じてできるだけ意見を発信していました。

 そもそも、クリエイターにとって「自由な発想ができる」ことはすべての創作の源です。思想に制限がないので自由に想像しながら創作することができ、その結果として、たとえば『進撃の巨人』の「巨人がやってきて、壁を壊し、人間を食う」ような奇抜で面白い物語が生まれるわけです。

 近年は危険や衝突をあらかじめ避けるために規制を強めていこうという世界的な流れがありますが、何が良くて何がダメなのかは時代によってかなり左右されますし、一度規制されてしまうと、戻すことは非常に難しくなります。自由の規制には慎重になるべきだと思うのです。

 私自身もこの「表現の自由」に支えられて創作活動をしてきましたし、これを次の世代のためにも守っていくことが、今までマンガの世界で夢を叶えさせてもらった私からの恩返しだと思っての行動でした。