残念ながら実際には彼の練習風景を見たことがありませんが、スティーブは舞台俳優からその話し方を学んでいると言われていました。俳優が驚く場面だったり、感動する場面でいかに話すかや、ドラマ性を生み出す話し方を勉強していたのかもしれません。
スティーブのプレゼンに関する本は数多く出ていますが、何度も近くで見てきた立場としては、そこから抽出された「三つの法則」(製品の特長を常に三つ言う)とか、「ビジュアルスライド」(文字より画像や数字を入れる)というような細かいテクニックは実際にはそれほど役立たないように思います。
小手先のテクニックを真似しても、当然ながらスティーブのようには話せません。そういう方法を会社内のプレゼンでやっても、決してうまくいかないはずです。ただ、スティーブのプレゼンから凡人でも学べるものがあるとするなら、聴衆との「一体感」をつくり出すことでしょう。
そして、一体感を生み出すには、こちらが「本気であること」を伝えることです。つまり、プレゼンで伝えようとするモノやサービスがそのユーザーに新たな驚きや喜び、感動を起こさせる「素晴らしいものだ」と自分で信じていること。
その上で、上っ面ではなく誠実な態度で伝えること。そんな本気度が伝わったプレゼンは「あ、この講演者は本気だ」という思いが聞き手に響き、同時に共感を誘う。それが会場の一体感を生んでいくのです。