「人気球団の4番打者」でも住宅ローン審査に通らない?フリーランス稼業の厳しい実態写真はイメージです Photo:PIXTA

収入が安定しにくいフリーランスとして働くかぎり、切り離すことが難しいお金の不安。その道を選んだ本人と同じ、あるいはそれ以上に我が子の身を案じてしまうのが、親心なのかもしれない。“人と暮らし”をテーマに執筆を続ける文筆家・大平一枝氏もまた、収入について両親から「長い間心配され続けた」と振り返る。フリーランス稼業が直面するお金の悩みと、そんな我が子を見守る母の想いとは?※本稿は、大平一枝氏『こんなふうに、暮らしと人を書いてきた』(平凡社)の一部を抜粋・編集したものです。

フリーランス夫婦に立ちはだかる
住宅ローンの高い壁

 フリーランスはローンを組むのが極端に難しい。将来まで安定した収入がないとみなされるからだ。夫婦ともにフリーランスの我が家は、住宅ローンで惨敗した。大手都市銀行は全滅。最初から相手にされないか、それはないよーという市場より大幅に高い金利を提示される。

 最初の住まいをなんとか購入したのは35歳。金利は今ほど低くはなく、銀行が強気だった。ゆえに不動産屋や銀行で、赤っ恥や悔しい思いをすることばかりであった。

 気に入った物件があると、不動産屋の営業の人が試算をする。そのタイミングで夫婦ともにフリーランスですと自白すると、あからさまに肩を落とし、残念そうな顔になる。そういう反応に慣れているので、どんなにとりつくろっていても、内心がっかりしているのがわかってしまう。

 ごく稀に、「自営の方に強い、弊社とお取引の長い銀行さんがあるので試算だけでもやってみましょう!」と言う人もいるが、貯金もないので、最後には死んだ魚の目のようになる。頭金が少ないと借入金が大きくなり、フリーランス向けの金利で計算すると支払いが不可能になるからだ。

 この生業の心もとなさを最初に痛感したのは、物件を探し始めてまもなく。購入の2、3年前で、新聞チラシを見て内見したあと、我々がフリーランスとわかった営業マンとの会話だった。